『アナと雪の女王』日本版がすごい!神田沙也加と松たか子が充実感を語る
ディズニーアニメーション最新作『アナと雪の女王』(公開中)が、日本でも爆発的ヒットを記録している。クチコミ効果も絶大で、リピーターの姿も多く見受けられるという。そこに大きく貢献しているのが、日本版の存在。ディズニーの伝統と挑戦が詰まった魅力的キャラクターを、神田沙也加と松たか子が演じており、その熱演と見事なハマりっぷりに驚きの声が上がっている。「この役に出会えて良かった」と微笑み合う2人に、日本でのヒットの感想、大役を演じきった充実感を聞いた。
アンデルセンの「雪の女王」をモチーフに、何でも凍らせてしまう力を持った姉・エルサと、彼女を救おうとする妹・アナとの愛を描いた本作。日本でもロングランが期待されるほど、幅広い層に受け入れられたが、エルサを演じた松は、「ディズニーが次に何を創るのか、世界中が注目していて、それにディズニーの方たちがしっかりと応えたということに他ならないと思うんです。ディズニーが新たな挑戦をした結果が、『アナと雪の女王』に詰まっている」と、ヒットの要因を分析。
アナを演じた神田も、「意外と大人向けなんですよね」とうなずき、「ディズニーのヒロインって、自立心のある女性として描かれることが多いけれど、『アナと雪の女王』の場合、それが『楽しいわ』『希望に向かって歩いて行くの』という明るい部分だけではなく、心の奥底のネガティブな部分までが描かれている。現代の大人の女性が見ても、ドキッとするようなことが入っているんです。今は、王子様を待っているヒロインの時代ではなくなってきているし、本作ではヒロインがヒロインを迎えに行ってしまいますからね(笑)。現代の女性のあり方というエッセンスがプラスされていて、私もとても魅力的に感じました」と、2人ともがディズニーの打ち出した新たな展開に惹かれた様子だ。
おてんばなアナと、自らの持つ力に恐れを抱いたエルサ。対照的な姉妹を演じた2人だが、松は「私が言うのもなんですが、本当にアナにぴったりだった!」と神田のアナ役を絶賛。「何の違和感もなく、アナが話している、歌っていると思えた。アナって、ちょっと変わっていてとっても面白い女の子。私は沙也加ちゃんが声を入れた後にアフレコをしたんですが、アナの魅力がとても自然に、チャーミングに吹き込んであったので、その力で私もすんなりとエルサに向かうことができました。沙也加ちゃんとのお仕事は初めてでしたが、一緒に姉妹を演じている実感を生き生きと感じることができて、すごく幸せでした」。
すると神田も「松さんは、いつかご一緒したいと思っていた先輩なんです」と打ち明ける。「それは、舞台というフィールドになるのかなと思っていたんです。でもこうして、いつまでも残るような形で松さんと姉妹になることができた。すごく嬉しかったです。映画のなかでもアナはエルサのことをとても恋しく思っているけれど、実際、アフレコやインタビューも松さんと別々にやることが多かったので、私はその点でもアナに気持ちを投影してしまって。松さんに会えた瞬間、ちょっと泣きそうになるんですよ!」と、思慕の念を告白。松も「あはは!」と笑い、顔を見合わす2人が本当の姉妹のように見えてくる。
重たい厚い雪をかきわけ、前に進もうとするアナ。ディズニーヒロインという大役を務め上げた2人だが、「前に進むのが怖い」と思うような瞬間はあるだろうか?松は「しょっちゅうですよ」、神田も「いつも、怖いと思っています」と、2人ともが“恐れ”を口にした。松は「どんな仕事でも毎回、毎日、大変だな、難しいな思うけれど、その怖さは、現場に行くことでしか解決できないんですよね。逃避するよりも、敢えてそこに向かっていくことでしか、絶対に前に進めない。怖いと思う気持ちもとても大切で、健康な証拠なんじゃないかな」と強い眼差しを見せた。
本作では、字幕版のエルサ役をブロードウェイの実力派女優イディナ・メンゼルが演じており、松は、イディナが歌い上げたナンバーにもトライしている。「ブロードウェイで彼女の『ウィキッド』を見て、時差ボケが吹き飛んだ記憶があるんです。そんな凄い人と同じナンバーを歌うのか、と思いましたね。でも、もちろん大変ではあるけれど、彼女のテンポやリズム、息づかいに合わせていく作業は、とても面白くて。『Let It Go』も大変な曲ではありましたが、曲に引っ張り上げてもらったような気もします」。
神田は「芸能のお仕事って、ひとつ作品が変わるごとに、関わっている人や環境が変わってくるんですが」と口を開き、「でもそれぞれに社会があるという意味では、会社にお務めの方と同じだと思うんです。私は、新しい社会のなかで人とどうやってうまくやっていくかとか、そういうことにとても緊張してしまう方で」と悩みを吐露。「でも今回、アナにとても助けられたんです。アナは、自分を、そして自分の周囲の人をとても信じている女の子。魔法は使えないけれど、それ自体が彼女の魔法なんだと思う。改めて、アナのような人になりたいと思ったし、この経験を今度は自分の勇気に変えていかないといけないと思います。アナから、本当にたくさんのものをもらいました」。
恐れに立ち向かうことで、人生の宝物を手に入れる。神田沙也加と松たか子の凛とした姿は、『アナと雪の女王』のテーマを体現しているかのようだ。ぜひ、日本版にも注目して、マジカルなひとときを堪能してほしい。【取材・文/成田おり枝】