「星の王子さま」の“その後”を描いた映画の製作陣が誕生秘話を明かす!

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「星の王子さま」の“その後”を描いた映画の製作陣が誕生秘話を明かす!

1943年に出版されて以来、日本でも多くのファンをもつ、サン=テグジュペリの「星の王子さま」。70年の時を経て、初めてアニメーションとして製作されている話題作が『リトルプリンス 星の王子さまと私』(15年12月公開)だ。完成を前にマーク・オズボーン監督が来日。キャラクター監修を務めた日本人クリエイター、四角英孝とともに話を聞いた。

『カンフー・パンダ』(08)などを手掛けたオズボーン監督が最初にこの企画のオファーを受けたのは、今から5年前。当時は、「星の王子さま」の映画化など不可能だと感じつつ「原作をそのまま描くのではなく、そこから発展させた壮大なストーリーを考えようとした。手法としてはCGをメインにしつつ、原作との架け橋になる部分に手触り感のあるストップモーション・アニメを使えば、うまくいくと思ったんだ。あまりに巨大なプロジェクトになるので絶対にスタジオや原作の権利者が断ると覚悟してたら、あっさりゴーサインが出たよ」と、企画のスタートを振り返る。

母親と二人暮らしの“女の子”が、隣に住む年老いた飛行士から「星の王子さま」の話を聞かされる。女の子のイマジネーションが広がり、予想外のアドベンチャーが始まるという物語。モチーフとなる原作「星の王子さま」にまつわるシーンがストップモーションで表現され、女の子とその母親、飛行士といった日常のキャラクターがCGで描かれる。

CGのメインキャラクターを監修した四角英孝が、「最初に完成されたストップモーションがあまりに素晴らしく、そのテイストをCGにフィードバックしていきました」と語るように、2つの手法のミクスチャーが本作の魅力になるようだ。さらに映像へのこだわりを四角は次のように語る。「ソフトがどんどん進化してきた現在、キャラクターも非常に精巧に、リアルに制作することができます。しかしあまりに精巧になると、人間の目には“蝋人形”のように映る危険も伴う。それを僕らは“不気味の谷”と呼んでいます。ですから本作では、人間の顔を微妙に“非対称”にしたり、骨格に忠実に動かすなど、細かい工夫をこらしています」。

ゲームを手掛ける製作会社スクウェアで「ファイナル・ファンタジー」などに関わり、「『トイ・ストーリー』(95)に感動してCGアニメ製作に携わりたかった」と、ハリウッドに渡った四角。ディズニーの『塔の上のラプンツェル』(10)で、ヒロインの長い髪なども担当した彼は、当時の苦労をもとに「キャラクターの髪を長くすると、それだけ製作費がかかる」などとオズボーン監督に助言したと、笑いながら告白する。

この『リトルプリンス 星の王子さまと私』は、アカデミー賞受賞者が3人も含まれるなど吹替も豪華。特にオズボーン監督がこだわったのが飛行士役で、「第一候補に考えたジェフ・ブリッジスには会えるまで9か月もかかった。最後はコネを使って彼の家に押し掛けたよ。ジェフは『もうあまり積極的に仕事はしたくない』という態度だったが、作品のイメージを詰めたスーツケースを見せたら、引き受けてくれたんだ」と、完璧なキャスティングを得たことを喜んでいた。

「日本人にも長年、宝物のように愛された原作。その映画化に参加できたことは僕にとって幸福で、これまでの知識と経験をすべて注ぎ込んだ」と、満足そうに語る四角英孝。作品の完成はもう少し先だが、「原作の精神を貫きつつ、原作を知らない人にも主人公の心の旅が強く訴えかける」というオズボーン監督の言葉を受け止め、映画の公開を待ちたい。【取材・文/斉藤博昭】

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