『ベイマックス』のプロデューサーが語る、大ヒット映画を作るための秘策とは?

インタビュー

『ベイマックス』のプロデューサーが語る、大ヒット映画を作るための秘策とは?

主人公の名前はヒロ、ふわぷに癒し系ロボットの顔は鈴がモチーフ、舞台はサンフランシスコ+東京を組み合わせたサンフランソーキョー。ディズニーが放つお正月映画『ベイマックス』(12月20日公開)は、日本にたっぷりフィーチャーした映画である。本作を引っさげて来日したプロデューサー、ロイ・コンリを直撃。『ベイマックス』の製作秘話から、日本という映画マーケットについての価値観まで、たっぷりと話を聞いた。

3度目の来日となったロイ・コンリ自身も親日家だ。「僕は日本が大好きだよ。東京、奈良、大阪、京都へ行ったことがある。僕は、元々、カリフォルニアで生まれ育っていて、日本人もかなり住んでいるし、1世紀以上にわたり、日本の建築やアートに印象を受けたようなデザインの建物などがたくさんある場所なんだ」。

『ベイマックス』は、最愛の兄を失った少年ヒロが、兄の遺した優しすぎるケアロボット“ベイマックス”と共に悲しみを乗り越え、絆を取り戻す姿を描く感動作。いつもながら丁寧につむがれたハートウォーミングな物語が胸を打つ。『アナ雪』もしかりだが、毎回クオリティーの高い作品を手がけるために、ディズニーでは、クリエイターやプロデューサーたちを集めたミーティングを重ねているそうだ。

「2006年にジョン・ラセターがウォルト・ディズニーのチーフクリエイティブオフィサーに就任した時、彼が始めたシステムなんだ。スタジオの監督たちは、どの企画にも参加して、自分の作品だけではなく、他の監督作品にも意見を出し合うんだよ。それぞれが、自分の心に響くストーリーや企画を持ち寄るようにしている。製作委員会方式的なイメージをもたれることが多いけど、そうではなくて、基本的には10~12人で自由に話し合う感じだ。それらの意見をフィードバックすることによって、よりストーリーが磨かれていくんだ」。

そういえば、ジョン・ラセターにインタビューした時も「何よりも大事なのは技術ではなくストーリーだ」と言っていた。今回の『ベイマックス』についても9回ほど意見交換会をしたそうだ。「12週間ごとに製作をしながら、セッションを積み重ねていく。その段階で、絵コンテは作ってきているんだ。それをつなぎ合わせて編集し、セリフ、音、音楽も仮のものを入れて、それを見てからノートセッションをする。毎回、細かいところを掘り下げていき、作品がどういう方向へ進んでいったら良いのかをみんなで決めていったんだ」。

ロイ・コンリは、ジョン・ラセターのことを心からリスペクトしているという。「僕は、21年間ディズニースタジオに在籍しているけど、ジョン・ラセターが来てからの8年間がいちばん素晴らしい時間だったよ。その前の13年間よりも、この8年間で学んだことの方が本当に大きかった。やっぱり、ラセター自身が真のフィルムメーカーってところが強みだと思うね」。

『ベイマックス』は、いまの時代にとても響く作品でもあると思うが、ロイ・コンリは、それよりも普遍的なメッセージをもつ作品であるかどうかが重要だという。「物語が現代的ということよりは、いつまでもずっと残っていく作品作りを意識しているよ。たとえば、僕が死んでしまっても、作品はしっかり残っていくようなものであってほしい。つまり50年後に『ベイマックス』を見ても、人間の感情や描かれている内容のリアルさは、変わらずに響くと思う。そういう作品であってほしいと常に思っている」。

『アナ雪』が社会現象を起こすほどのメガヒットとなったが、ロイ・コンリ自身は日本のマーケットについてどう思っているのか?と尋ねると「最高です」とと答えてくれた。「なんといってもアニメーションに対する愛情を強く感じるマーケットだからね。世界から見てもナンバー1じゃないかなと思うよ。また、僕自身、日本が大好きだから、いつか日本に暮らしてみたいとも思っているくらいだ」。

最後にロイ・コンリは、本作について「我々は、日本の作品に対して大きな愛とリスペクトの念をもっている。本作では、それを感じていただきたい。『ベイマックス』は、我々から日本文化へのラブレターでもあるんだ」と熱い思いを語ってくれた。なるほど、確かに、本作には、日本への愛が散りばめられている。寒さが身に染みるこの季節、映画館へ行って、『ベイマックス』のほっこりするような温かい愛に包まれてみては?【取材・文/山崎伸子】

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