松坂桃李らが明かす、音楽映画の“珍”裏話

インタビュー

松坂桃李らが明かす、音楽映画の“珍”裏話

さそうあきらの同名人気コミックの映画化作品『マエストロ!』(1月31日公開)で共演した松坂桃李、miwa、西田敏行にインタビュー。本作は、西田扮する謎の指揮者の下、負け組楽団員たちが繰り広げる、笑いと涙の音楽映画だ。

初めてヴァイオリン演奏にトライした松坂に、初めて指揮棒を振った西田、初めて女優デビューをしたmiwa。彼らに“初めてづくし”の苦労話を聞いた。

『マエストロ!』は、世界的な指揮者・佐渡裕が日本映画に初参加し、西田への指揮指導や指揮演技監修を務めた本格的な音楽映画だ。コンサートマスターでヴァイオリニスト役の松坂は、オーケストラの演奏シーンを撮影し、感銘を受けたと言う。

「お芝居ではなく、本当にコンサートをやっているような感覚に陥りました。ある種、コンサマスターとしての達成感に近いものを感じることができたんじゃないかなと。僕の人生のなかでも、音楽家としての経験みたいなものを蓄えさせていただけた気がします」。

西田も同シーンではすごく達成感を感じていた。「気持ちがぎゅーっと凝縮されたような感じで撮影に望みました。全員のシーンに付き合いましたが、そういうことをごく自然にできたんです。現場を離れたくなかったです。そういう意味でも思い入れの強い作品になりました。やはり、ひとつの演奏を終えたオーケストラプレイヤーのごとく、俳優としてのカタルシスを感じたのではないでしょうか」。

自身もミュージシャンであるmiwaは、クラシックに対して新鮮な感動を覚えたと言う。「改めて『運命』と『未完成』というクラシックの名曲を聴きこみ、私が担当したフルートが2曲のなかでどういう役割をしているのかを知ることができて、驚きもありました。(運命の)ン・ジャジャジャジャーンには、本当にビックリしました」。

西田演じる謎の指揮者・天道徹三郎は、コミカルに下ネタを炸裂させる。通常はアドリブを入れる西田だが、今回は大阪弁のセリフということで、ほぼアドリブはやらなかったそうだ。「アドリブが使えないというのは、僕にとってはいちばん苦しい状態でした。“チンチン”のアクセントとかも直されましたね」。監督の小林聖太郎は大阪出身ということで、逐一チェックが入ったと言う。

miwaも「現場で何回もそのワードが響き渡り、私たちは笑いをこらえようとじっとしていました」と思い出し笑い。西田も「みんな、楽器を構えながら、笑いたいのを我慢しているのがわかりました」と同意。松坂も「小林監督とのやりとりが可笑しくて。台本を読んだ時の面白さと、現場で西田さんが言う面白さって、全然違うので。必死に笑いに堪えてました」とのこと。

西田は「監督とは漫才的なやりとりになるんです。なんといっても大御所のせがれですからね」とうなずく。そう、小林監督は、言わずと知れた上岡龍太郎のご子息である。miwaは、西田について「いらっしゃるだけで、現場がすごく華やかになるんです」と存在感を称える。

「撮影の合間は、みなさん、それぞれの楽器の練習に励むという感じで、あまり会話はなかったんです。でも、西田さんが現場で冗談などを言ってくださると『ああ、今日も1日楽しく始まるな』という感じがして、その時間がとても好きでした」。

最後に、本作をこれから見る方へのメッセージをもらった。西田は「映画館へ足を運んでいただいたら、そこからすべてが始まります。最後、お帰りになる時は、感銘、感動を胸にして帰られることは約束します。音もすごく良いから」とアピール。松坂も「コンサートを見に来る感じで来ていただきたい。1800円でコンサートが見られます」と言うと、西田も「それそれ。それですよ!」と納得。miwaも「確かに佐渡裕さんが指揮をしてレコーディングしてくださった音が1800円で聴けるなんて贅沢です!」と演奏シーンをプッシュ。

確かに、佐渡裕指揮によるベルリン・ドイツ交響楽団ベートーヴェンの「運命」やシューベルトの「未完成」などの音楽も素晴らしいが、松坂たちキャストたちによる演技のアンサンブルも実に丁寧で、映画全体がウェルメイドな仕上がりとなっている。そんな至福の映画『マエストロ!』は、是非大きな映画館で鑑賞してほしい。【取材・文/山崎伸子】

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