目指せチャン・ツィイー!注目の中国新進女優は?
中国が誇る名匠チャン・イーモウ監督の記念すべき20本目の映画『妻への家路』が3月6日に公開された。本作を見ると、改めて監督の女優に対する目利きに感心させられる。
ご存知、『紅いコーリャン』(87)のコン・リーや、『初恋のきた道』のチャン・ツィイーなどを見出し、女優として開花させたチャン・イーモウ監督。『妻への家路』でも、本作でデビューしたチャン・ホエウェンのみずみずしさがなんとも印象的だ。
『妻への家路』で描かれるのは、文化大革命後1970年代の中国で、ある夫婦を襲った悲劇。1977年、文化大革命が終結し、20年ぶりに解放された夫(チェン・ダオミン)が妻(コン・リー)の待つ自宅に戻ると、再会した彼女は、心労による心因性記憶障害で、夫の記憶だけを失っていた。チャン・ホエウェンは、2人の娘役を好演している。
チャン・ホエウェンを「輝く瞳に、若き紅衛兵のオーラがあった」と称えるチャン・イーモウ監督。これまでに、輝く原石を発掘し、その女優を大ブレイクさせてきた監督だが、若手女優から素晴らしい演技を引き出すコツのようなものってあるのだろうか?来日したチャン・イーモウ監督に聞いてみた。
すると「中国でもよく聞かれるけど、コツなんてない」とキッパリ。「役者を選ぶ段階がいちばん大事なんだ。私は毎回新人を選ぶ時、助監督たちにあちこちの学校へ行かせて探させている。よく『ひと目見て、この子だと思った』と言う映画監督がいるけど、私は絶対にそんなことは信じない。初対面でそんなことは思わないし、仮にふとそう思ったとしても、本当にその子が演技ができるかどうかなんて本人自身もわからないと思う」。
では、実際、チャン・イーモウ監督ならどう出るのか?「私がするのは、何人かに合って、何度もテストをして確かめていくことだ。もちろん、自分が思い描いていた雰囲気と合っている子がいたりはするけど、私はそれが絶対だとも思わない。もっといろんな科学的な方法で何度も試してみるんだ。もちろん役者の天性はあると思う。でも、その天性、素質や資質を発掘していく過程がいちばん大切なんだ」。
チャン・イーモウ監督が語る言葉にはとても説得力がある。実際、チャン・ホエウェンは映画初出演とは思えないほどの存在感を発揮している。とりわけ、彼女がバレエを踊るシーンは、やり切れないほど切ないシーンを重ねていく本作に、一筋の光、人生における希望のようなものを与えている。
チャン・ホエウェン、今後が楽しみな若手女優として、その名を覚えておきたい。【取材・文/山崎伸子】