哀川翔、30周年記念作を品川ヒロシ監督に任せたワケ
やんちゃでエネルギッシュで、男気にあふれた男、哀川翔。芸能生活30周年記念作品となる『Zアイランド』が5月16日(土)より公開となる。
ヤクザとゾンビが戦いを繰り広げる世界で、個性派俳優が大暴れ。危険物質が混ざり合い、まぶしいほどの輝きを放つ意欲作に仕上がった。メガホンをとったのは、品川ヒロシ監督。なぜ哀川は記念作を品川監督に託したのか。品川監督の思う、哀川の記念作にふさわしい作品とは?二人を直撃した。
『ドロップ』(09)、『サンブンノイチ』(14)と品川組を経験してきた哀川。「瞬間的な印象」で品川監督に「30周年になるんだけど、ちょっと撮ってくんないかな?」と声をかけたそう。
哀川は、品川監督の印象を「『ドロップ』のときにさ、もうベテラン風を吹かせてたのよ。俺と遠藤憲一に『コノヤロウ』『バカヤロウ』のセリフしかなくて、あとはフリートークでお願いしますって言ったりさ。初監督でこれはおかしくねえか!って思ったよ」と笑い飛ばす。
「でもさ、上がってきた作品を見ると素晴らしいんだ。監督の映画魂っていうのが、1作目から炸裂していた。2作目、3作目も、手を変え品を変え、“確実にお客さんを満足させたい”というその魂をちゃんと反映させてきている。タイミングが合って記念作を撮ってもらえたら、ラッキーだと思ったね」
哀川の絶賛の声を受け、「うれしいですね」と笑顔をこぼす品川監督。哀川のスタンスは「何を撮るにしても(品川)監督に任せる」というものだったそう。そこで品川監督が仕上げた脚本が、ヤクザ対ゾンビのハイテンションな対決ストーリーだ。
哀川の事務所からは「心温まるヒューマンドラマがいいのでは」との声もあったが、品川監督は「翔さんに『どうしましょう』と相談したら、『そりゃ、ヤクザ対ゾンビがいいよ!』と言ってくれて。翔さんのファンがどちらを見たいかと考えても、こっちだと思うんですよね」と述懐する。
面白いのは、哀川の記念作でありながら、群像劇として彼以外の俳優の面々も弾けまくっている点だ。哀川は「異種格闘技戦の究極」と笑いながら、「俺が一人でやってもたかが知れているのよ。だって、一人一人のキャラを出し惜しみする必要ないじゃない!俺が主役であったとしても、周りに突出したものがなければ面白い映画ってできない。俺はVシネマを山ほどやってきたからわかるんだけど、娯楽映画っていうのはいろいろな主役がいないと成立しないわけ」と持論を明かす。
品川監督も「それぞれが自分のターニングポイントだと思えるような気合いを入れてやってくれて、それが面白ければ、翔さんの30周年を盛り上げるのに一番いいんじゃないかと思ったんです」とうなずき、「翔さんにはいつも『お前の好きにやれ』『みんなが面白いのが一番いいんだから』と言っていただいた」と哀川の男気に感謝しきり。
鈴木砂羽、木村祐一、湘南乃風のRED RICE、窪塚洋介、シシド・カフカ、鶴見辰吾ら、品川監督が「翔さんもそうですけど、俺、やっぱり不良が好きで。もちろん本当には起こさないですけど、来年あたり何か問題を起こしそうみたいな、ワルっぽい雰囲気がある人が好きなんですよね(笑)」というメンバーがジャンルを超えて顔を揃えた。
「翔さんがそう言ってくれたおかげで、みんなすごい気合い入っていた。翔さんって分け隔てなく声をかけて、『腹減ってるなら飯食いに来いよ』と言ってくださる人で。相手が5歳でも80歳でも、役者でもミュージシャンでも芸人でも関係ない。誰に対しても哀川翔なんです。水と油ってよく言いますけど、翔さんは塩。水と油が混ざっちゃうんです。翔さんをポンと放り込んだら、すぐにみんなひとつになっちゃう」
チームの結束も、哀川の人間力が支えた。
哀川は「現場はすごかったね。みんな『やってやる』という感じがすごくあった。エネルギッシュでリハーサルからバリバリぶつかっていたもんね。面白かったよ!」と大満足の表情。
年齢は50代を迎えているが、「俺はヤクザ対ゾンビをやるには、ギリギリの歳よ。今回、ビックリしたよ。ここまでやらせるんだ!って」とアクション満載の展開に驚きも。
「でもさ、人間って面白いもので、ここで火がついたら来年、再来年とどんどん動ける。火がついちゃうとまた稼働するんだよね。するとプライベートまで変わってくる。エネルギッシュになるんだよ。おれもこの作品に刺激を受けちゃってさ、いろいろと燃えてきちゃったよ!」
どうやら哀川翔の快進撃はまだまだ止まりそうにない。人を愛し、映画を愛する。懐深くてどこまでもパワフル。『Zアイランド』はそんな彼の魅力がたっぷり詰まった、30周年を祝うのにピッタリの1作となった。【取材・文/成田おり枝】