『余命1ヶ月の花嫁』予想外の大ヒットの理由
おっと! 5月9日に公開された『余命1ヶ月の花嫁』が、並み居る超大作や人気シリーズものを抑えて、堂々興行ランキング1位をマーク。初日2日間の興行成績は動員302,608人、興収412,980,900円で、この数字は興収31億円となった『涙そうそう』(06)との興収対比の105.7%となり、興収30億円も射程圏内となった。でも、なにゆえ本作がそこまでヒットしたのか!?
本作の出もとは、2007年7月にTBSで放送された同名ドキュメンタリー番組で、乳がんと闘い、24歳という若さで他界した長島千恵さんの実話である。千恵さんと、彼女を献身的に支えた恋人・赤須太郎さんとの深い愛を軸に、家族や友人たちの思いを綴った番組が大いに反響を呼び、映画化に至った次第だ。
もともと、テレビ局製作の映画の番組宣伝力は侮れないが、今作に関して言えば、大ヒットの要因は他にもある。それはずばり、公開のタイミングだ。
まずは、榮倉奈々と瑛太の顔合わせが今のタイミングで実現したこと。榮倉はヒロインを務めたNHK朝の連続テレビ小説「瞳」で、瑛太も話題を呼んだ「ラスト・フレンズ」やNHK大河ドラマ「篤姫」で、いずれも2008年にお茶の間で旬な存在となった後だから。榮倉が初日舞台挨拶で、千恵さんの恋人だった赤須太郎さんからの手紙に涙する姿も報道され、一層好感度がアップ。
さらに特筆したいのは、公開日がGW明けだった点だ。ざっと興行ランキングを見ても、2位の『レッドクリフpartII』、3位の『名探偵コナン〜』という2強の大作をはじめ、4位の『GOEMON』、5位の『劇場版 超・仮面ライダー電王〜』、6位の『クローズZERO II』と、GWに公開されたヒット作群は、いずれも男性好みのシリーズものやアクション映画ばかり。ラブストーリーに飢えていた女性陣が、究極の悲恋物語である『余命1ヶ月の花嫁』に飛びついたのもうなずける。実際に本作の客層は、千恵さんと同世代の20代の女性が8割以上を占め、カップルや友達、家族などグループでの動員にもつながったようだ。
いずれにしても『余命1ヶ月の花嫁』が大ヒットしたことで、「がんと闘う自分の思いを同世代の人たちに伝えたい」という千恵さんの遺志はいっそう多くの人々に伝わったわけだ。
折しも同じく若くして乳がんを患い「おっぱいの詩 21歳の私が、どうして乳がんに?」という闘病手記を出版した大原まゆさんが、偶然にも本作の公開日の5月9日に乳がんの再発でこの世を去られたと聞いて胸に熱いものがこみ上げてきた。なぜなら彼女の小説も2007年に平山あや主演作『Mayu ココロの星』として公開され、舞台挨拶では自ら乳がん検診の大切さを訴えかけるまゆさんの姿を目にしているから。
そういう意味でも、多くの女性に観てほしい本作。2009年は乳がんの早期発見につながるX線検査「マンモグラフィ」の受診者も、いつになく増えるに違いない。【MovieWalker/山崎伸子】