『アベンジャーズ』の監督、『ラピュタ』へのオマージュを語る
人気ヒーローの最強軍団が活躍する映画『アベンジャーズ』の続編が、前作よりかなりスケールアップして登場。ポスターを見ただけでも、期待度はハンパない!そんな第2弾『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(7月4日公開)を引っさげて来日したジョス・ウェドン監督にインタビュー。監督は、宮崎駿監督作『天空の城ラピュタ』(86)へのオマージュシーンから、エンドクレジットに込めた深いメッセージまで、興味津々の秘話を語ってくれた。
アイアンマンとして人類の危機を救ってきた実業家で発明家のトニー・スターク(ロバート・ダウニーJr.)。彼が世界平和を守るために、禁断の平和維持システムといえる人工知能“ウルトロン”を起動させたことにより、アイアンマン率いるアベンジャーズが最大の危機に陥ってしまう。
ジョス・ウェドン監督は、今回のトニー・スタークの役割をこう分析する。「元々トニーには独善的な部分があり、何もかも徹底的にやらないと気がすまない質だ。それが災いして、とんでもないことが起こってしまう。それが今回、ウルトロンという究極の形で現れるんだ。
でも、映画を編集していて気づいたのだけど、トニー・スタークとウルトロンは、コインの裏表、表裏一体的な存在なんだ。今回のトニーはある意味、悪役でもある。この映画にとっての諸悪の根源といえば、彼が1人で突っ走ってしまったことなんだ。だから、彼はヒーローであると同時に悪役でもある。ウルトロンも悪とはいえ、もともとは善意から始まっているわけだからね」。
劇中で、街が持ち上がっていくシーンも気になるところだが、『天空の城ラピュタ』との関係性について尋ねると、ジョス・ウェドン監督は「イエス!」と力強く首を縦に振ってくれた。「宮崎駿監督の大ファンだし、『ラピュタ』は本当に大好きな映画なので、今回すごくインスピレーションを受けたよ。実はウルトロンを含めたテーマは、『ラピュタ』の映画のテーマにつながるものがあるとも思っている」。
劇中で、トニーが住むアベンジャーズ・タワーの棚に、『天空の城ラピュタ』に登場するロボット兵のレプリカがさりげなく飾ってある点もにくい。「あとから起こる悲劇を示唆する意味でも、部屋にロボットを置いたんだ。『ラピュタ』で番人となるロボットを作るのと、トニーがウルトロンを作る動機は同じだから。ロボットは平和を守る番人で、トニーも最初はそのつもりで作ったのに、ああいう事態になってしまったんだ」。
さらに監督は「自分にとって一番うれしかったのは、レプリカで作ったロボットを撮影した後、自分がもらって帰れたことだ。いま、自分のリビングルームに飾ってあり、娘が毎晩抱いて寝ているよ。本当に気に入ってるんだ」と、なんともおちゃめな笑顔を見せる。
また、アイアンマンたちヒーローが大理石となって登場するエンドロールも印象的だが、それに込めたメッセージについても聞いてみた。「あれは僕も気に入っているよ。実は、最初にアベンジャーズ・タワーの前に、似たような大理石の銅像がちらっと出てくるんだけど、あれは前作のNY大決戦で命を落とした人々に捧げる像というコンセプトなんだ。そしてそのミニチュア版が、トニーの棚にも置かれているよ。
大理石にしたことには、ちゃんと理由がある。大理石には、時代を超えた歴史的な趣があるからだ。ヒーローたちは、何か大きな大義のために戦い、犠牲を払って、歴史の一部になる。いわば自分たちの歴史を築いてくれた人でもあるから、いまの自分たちが生きていられるのはこの人たちのおかげなんだということを忘れてはいけない。そういう歴史におけるヒーローの存在を象徴したものなんだ」。
さすがは、前作に続き、脚本から作り上げているジョス・ウェドン監督。細部に渡り、いろんな熱い思いが散りばめられているのだと実感した。ただのヒーローものというジャンルでは語り尽くせない『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』を観て、ヒロイズムの奥深さも感じてほしい。【取材・文/山崎伸子】