セックスを3Dで描く!ギャスパー・ノエが射精シーン秘話、性表現規制について熱弁

インタビュー

セックスを3Dで描く!ギャスパー・ノエが射精シーン秘話、性表現規制について熱弁

『カノン』や『アレックス』など常にタブーに挑むような作品を世に送り出してきたフランス映画界の鬼才ギャスパー・ノエ監督。さらなる衝撃を映画界に与える最新作『LOVE 3D』が、いよいよ4月1日(金)より公開となる。セックスに次ぐセックス。数々の濃厚なラブシーンを3Dで描くという大胆な試みだ。なぜ3Dという手法を使ったのか。性表現の規制についても、「バカげている」という正直な思いを明かしてもらった。

本作は、若い妻と幼い息子と暮らす青年マーフィーが、かつての恋人エレクトラとの激しい愛の日々をセンチメンタルに振り返る物語。本作の着想のきっかけについて、「『アレックス』よりも前から持っていたものなんだ。10年ぐらいまえかな」と温め続けていた企画だと語るノエ監督。

『アレックス』『エンター・ザ・ボイド』を先に撮ることとなったが、「『LOVE 3D』は、濃厚なシーンが多いから、役者たちには勇敢さが必要だった。けれど、出演してくれた役者たちもその2作品を知ってくれていて。シリアスな作品を作る監督だとわかってくれていたので、信頼関係が築けたんだ。その間に3Dのテクノロジーも進化して、撮りたいと思うものが撮れたしね。今だからこそ、納得のいく作品ができたと思う」と機が熟した時だったとか。

さらに「個人的なことをいうと母が亡くなったことも大きい。身近な人の死を経験して、人生に対してメランコリックなものが自分の中にできた。もし10年前に撮っていたら、2Dの映画で、もっと明るい普通の話で終わるものになっていたかもしれないね」というように、本作に漂う切ないほどの喪失感も、今だからこそ表現できたものだという。

なぜ、濃密な愛を3Dで描こうと思ったのだろうか。「3Dにすることによって、より没入感と親密度が生まれると思ったんだ。どっぷりとその世界に浸かれるはずだ。3Dの映像表現にはすごくリアルに感じられるところと、非現実的なところがあって、不思議な感覚が生まれるよね。本当は字幕もぼかしもない方が、それが感じられる。字幕やぼかしがあると、ぶち壊しな部分もあるよね」

とりわけインパクトを与えるのが、射精シーン。性液がスクリーンから飛び出すかのような映像を捉えたが、ジェームズ・キャメロン監督の『アバター』を観たときからやってみたかった表現だという。「『アバター』の3Dを観たときに本当に驚いたんだ。射精シーンを正面から3Dでやってみたら面白いだろうな思ったよ。『アバター』がもし2Dの映画だったら、あの射精シーンは横からのショットで撮っていたかもしれないね(笑)」

今回の試みもしかり、「タブーに挑む」という印象があるノエ監督。しかし本人は「僕自身はタブーに挑んでいるという意識はないんだ。今回だって、普通の若者の恋愛を描いているよ」とサラリと答える。「若い人ほど、ウサギのようにセックスしまくることだってある。それに愛というのは、身の回りの解決策だと思っていると、実は問題の始まりだったりすることがよくある。恋に落ちると盲目になったり、正気を失ったりするからね。生きる力を与えてくれると同時に、それを失うんじゃないかという、不安感や危険性もはらんでいるものだ。そういった愛のすべて、儚さのようなものも描いたつもりだよ」

そして「ただこれまで、こういった愛の描き方をすることが映画市場には存在しなかったことは確か。リスクを伴うから、資金集めにも苦労するからね。内容は普通の若者の恋愛だと僕は思うけれど、他に今まで描く人がいないから、タブーだといわれるんだ」とじっくりと語る。「ウクライナではこの映画は21歳以下は禁止。デンマークでは15歳以下は禁止だけれど、親同伴ならば観に行けるというんだ。国によって規制も様々だね。イランでは上映禁止だけれど、そうすると逆に海賊版が出回って、普通に道で売られていたりする(笑)。結局、規制しても観られるから、バカげたことだと思うよ 。もちろん、性的なことを含む暴力はある程度の年齢まで見せない方がいいとは思うけどね」

日本ではR-18指定で公開となる本作。異端を恐れずに突き進むノエ監督は「日本ってすごくセクシュアリティな文化が根付いているし、横行している国だと思うけれど、いざ陰毛となると映してはいけないという。すごくおかしな話だよね。僕は生殖器だって、手や顔など人間の体の一部であって、なんら変わりがないと思っているよ」と日本の規制にも苦言を呈していた。【取材・文/成田おり枝】

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