あの無差別殺傷事件をモデルにした「二度と観たくない」と言われるほどの衝撃作とは?

映画ニュース

あの無差別殺傷事件をモデルにした「二度と観たくない」と言われるほどの衝撃作とは?

海外はもちろん、日本でも多くの作品が作られている“実録犯罪映画”。実際に起きた事件・犯罪を題材にしたこのジャンルは、古くから製作され続け、数々の傑作を世に残している。物語において重要な“結末”が既に知られており、しかも心を抉るような内容のものも少なくない中、観客はなぜこれほどまでに“実録”に魅了されるのだろうか。

代表的な日本の名作としてまず挙げられるのが、今村昌平監督の『復讐するは我にあり』(79)。1963年10月に2人を殺害、1964年1月に逮捕されるまで逃亡を続け、合計5名を殺害した「西口彰連続強盗殺人事件」を題材にした小説を緒形拳主演で映画化したもので、徹底したリアリズムが貫かれ、あまりに生々しい殺人シーンに震撼させられる。マーティン・スコセッシが影響を受けたと語り、ポン・ジュノがオールタイム・ベストとして選ぶなど、世界の名監督たちからも支持されている1本だ。

1979年に銀行員と警察官計4人を殺害し、逃亡後に射殺された「三菱銀行人質事件」の犯人をモデルにしているのが、高橋伴明監督の『TATTOO<刺青>あり』(82)。犯行そのものではなく、犯人の生い立ちから事件を起こすまでの姿を描いた人間ドラマで、実録ものとしては異色。高橋監督は、1966年に起きた「袴田事件」をモチーフにした社会派ドラマ『BOX 袴田事件 命とは』(10)も撮っている。

ほか近年の作品でいえば、1993年に起きた「埼玉愛犬家連続殺人事件」をベースにした園子温監督の『冷たい熱帯魚』(10)、同じく園監督が1997年に起きた「東電OL殺人事件」にインスパイアされ撮り上げた『恋の罪』(11)、「上申書殺人事件」を追ったノンフィクション「凶悪 ある死刑囚の告発」を映画化した白石和彌監督の『凶悪』(13)などもある。

そして、そんな日本の実録犯罪映画の歴史に名を刻む新たな1本と言われているのが、現在公開中の『葛城事件』だ。劇団「THE SHAMPOO HAT」を率いる赤堀雅秋が自身が手がけた舞台を映画化した本作は、次男が“無差別殺傷事件”を起こしたある家族が辿る運命を描いた人間ドラマ。本作の元となった13年の舞台版は、2001年に起きた無差別殺傷事件「附属池田小事件」をモチーフに書かれていたが、映画化にあたって赤堀監督は「土浦連続殺傷事件」「秋葉原通り魔事件」「池袋通り魔殺人事件」など、近年起きた様々な事件を参考にしたという。

厳密な“実録もの”とは言えないが、各事件の犯人像やその公判の傍聴記録、事件を起こすに至った背景、家族像などを調べて新たなキャラクターを創出しており、本作で描かれる犯人像やその周囲の人間模様はあまりにリアル。既に「傑作」と評判になっているが、衝撃的な内容から、「二度と観たくない」「エグすぎる」「後味が悪すぎる」との感想も寄せられているほどだ。

観る者の心を深く抉り、複雑な思いを抱かせ、日本映画の事件となって大きな傷を残すに違いない本作。まだ未見の人は、ぜひその強烈さを劇場で目撃してみてほしい。【Movie Walker】

作品情報へ

関連作品

  • 葛城事件

    4.1
    7
    無差別殺人事件を起こした男とその家族にふりかかる過酷な運命を描く人間ドラマ
    Prime Video U-NEXT