全20話だからこそ実現できた!ドラマ版「沈まぬ太陽」の魅力をチェック
「白い巨塔」「大地の子」などで知られる山崎豊子の長編小説を映像化した、WOWOW開局25周年記念「連続ドラマW 沈まぬ太陽」。09年の映画『沈まぬ太陽』も、当時映画賞を軒並みに受賞するなど高評価を受けたが、本ドラマではより重厚に、より原作を忠実な作品になっている。そんなドラマ版のおもしろさを検証した。
本作は、高度経済成長期の大手航空会社“国民航空”が舞台。そこに勤務する実直な主人公・恩地元(上川隆也)と、彼の同期で親友のエリート志向の行天四郎(渡部篤郎)の2人が、会社上層部に翻弄され、やがて別々の道を歩んでいく姿を活写する。
まず、ドラマ版の大きなアドバンテージは、WOWOW史上最長の全20話で構成されるそのスケール感だ。原作が3部構成、全5巻の長編小説だけあり、映画も約3時間半という長尺で上映されたが、やむなくカットされたシーンや人物も多かった。
労働組合委員長を務める恩地が会社と対立したために、中央アジアやアフリカへ不当な転勤を命じられてしまうという原作の第1部「アフリカ篇」を、映画では回想シーンにとどめ大幅に簡略化。一方、本ドラマでは「アフリカ篇」に8話を費やし、苦悩する主人公により感情移入できるようじっくりと描かれている。
また、恩地を囲む登場人物たちの、より細かな心理描写もポイント。労働組合に属する客室乗務員・三井美樹(壇れい)は、過酷な職場環境でもひたむきに働き続け、志を同じくする恩地に特別な感情を寄せる様子が描かれる。
そのほか、恩地の赴任先の支店長・島津(永島敏行)がみせる公明正大な仕事ぶりや、恩地に幾度となく立ちふさがる堂本取締役(國村隼)の思惑など、ドラマ版ならではの深みのある人物像に引き込まれるだろう。
また、映画には登場しなかった、曲者キャラたちにも注目したい!長谷川京子演じる、行天の愛人・客室乗務員の小川亜紀子は、妻子ある行天と秘密の逢瀬を重ねながら、彼のスパイとして暗躍していく。
陣内孝則扮する、国民航空と癒着している国交開発の社長・岩合宗助は、悲惨な旅客機墜落事故の後でも豪華クルーザーを乗り回し、不正な上納金をせしめるなど、私腹を肥やすことしか考えない本作の最大の敵役だ。
映画では描き切れなかった原作の要素を、丁寧に紡いだ「連続ドラマW 沈まぬ太陽」。重厚な社会派長編ドラマを存分に堪能してほしい!【Movie Walker】
第2部(第9話~第20話) 7月10日(日)放送スタート、毎週日曜22:00
※第9話無料放送
※7月3日(日)第1部(第1話~第8話)総集編無料放送
※7月9日(土)・10日(日)第1部(第1話~第8話)全話一挙放送