気だるいアラサー女優の“濡れ場”に批評家が高評価!
劇団毛皮族の看板女優・町田マリーが、(撮影当時)30歳を目前にして新たな境地に挑んだ『美代子阿佐ヶ谷気分』(上映中)が、批評家から高い評価を得て注目を集めている。
町田が演じるのは、漫画家・安部愼一を精神的に支え続ける恋人・美代子。本作は、70年代初頭の阿佐ヶ谷を舞台に、漫画誌「ガロ」で執筆する安部の苦悩や焦り、そして次第に病んでいく様を映し出していくのだが、その中で美代子に扮する町田の存在が一際目を惹くのだ。
私生活を赤裸々に描き出す創作スタイルゆえに行き詰まり、現実と空想の境界さえ定かでなくなってゆく安部を、母親のように見守り続ける彼女の表情はまるで菩薩のようだ。その一方、大胆な濡れ場シーンでは妖艶な肢体を惜し気もなく披露し、女の業と性をも見事に体現している。
詩人・映像作家の鈴木志郎康は「70年代の表現者が時代を切り抜けて今も生きているというところに感動があった。人間関係が希薄になりつつある現代の意識の有り様に、濃密な身体関係をぶつけてくる作品だ」と評し、評論家の宇野常寛は「あらゆるモチーフが『萌え記号』を纏ったコスチューム・プレイとして『安全に痛く』作用するこの時代において、ただ裸身を晒すだけで、いや、あらゆる意味で裸になることだけが、この解体されきった世界――ゼロ世代からあの頃を照射する方法なのだ」と賞賛するなど、作品そのものだけでなく町田の演技も各方面より高く評価されている模様。
ともあれ、70年代の阿佐ヶ谷のアパートに佇む町田マリーの気だるい裸身は、慌しく毎日を生きなければならない我々に、独特の和みを与えてくれることは間違いなさそうだ。【トライワークス】
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