坂上忍が“怒りん坊”である理由とそのポリシーとは?

インタビュー

坂上忍が“怒りん坊”である理由とそのポリシーとは?

天才子役としてキャリアをスタートさせた演技派俳優でありながら、いまやバラエティ番組の司会者やコメンテーターとして歯に衣着せぬ物言いが好評を博している坂上忍。今回坂上が、人気ゲームを映画化した『アングリーバード』(10月1日公開)で、初めてアニメ映画の日本語吹替えに挑戦した。演じた主人公レッドが“怒りん坊”ということで坂上にオファーが入ったというが、果たして坂上は自身のパブリックイメージをどう受け止めているのか?その胸の内を聞いてみた。

坂上が声をあてたのは、小さなことですぐに腹を立ててしまうレッド。その性格から友だちもできずにいたレッドだったが、鳥たちが盗まれた大切なタマゴを取り返すために立ち上がり、みんなと力を合わせてタマゴを取り戻そうとする。

実は子役時代に海外ドラマ「大草原の小さな家」で日本語吹替えの経験はあったが、今回はアニメ映画ということで別の苦労を味わった。坂上はアフレコの際に、台詞の息継ぎのタイミングについてかなりディレクターと戦ったそうだ。

「僕はどうしても感情でやりたがるから切りたくないんですが、ディレクターさんは長さ的に無理だからと切ろうとする。初日に2時間くらい収録をやってぎくしゃくし始め、途中から『もうあいつの顔は見たくない』とブースのカーテンを閉めてしまいました。だから怒るシーンは楽でしたね(苦笑)」。

そんな自分の怒りん坊ぶりについて坂上は「僕は普通に思ったことをそのまま言っちゃうだけなんです。でもいまは怒る人がほとんどいなくなったので、僕も時代に合わせて何も言わずにヘラヘラしていた方がいいのかなと思った時期もありました。その後、別に諦めたわけではないんですが、抑えるストレスの方が大きくなっちゃったので、やっぱり言うことにしました。これでも自分ではいろいろと空気を読んでいるつもりなんですが(苦笑)」。

多勢の意見に迎合することなく、自分の意見を述べる坂上だからこそ、その姿勢を称賛する声も多い。「僕が1つだけ気をつけているのは嘘を言わないこと。僕はこう思っていると言い切ることですね。回りくどく言うと逆に良くないし、相手からも誤解されることが多い。中途半端に遠慮して『これを言ったら嫌われちゃう』という姑息なことを考えるのは一番よくないです」。

坂上は、どんなことでも100対0と意見が分かれるパターンはあまりないと言う。「3対7とか5対5とかいろいろですよ。ただ自分が3の側にいる時でも、『僕はこう思う』と言い切ってしまえば3側の人はすっきりして納得してくれるだろうし、7側の人たちも『僕とは考え方が違う』と思うだけなんです。そこでちょっと遠回しに7の側についたり、迎合したりすると『お前は何なんだよ』となる。そっちの方が恥ずかしいですから」。

司会を務めるバラエティ番組「バイキング」をはじめ、コメンテーターとしてもひっぱりだこの坂上だが、実は俳優業との間に垣根はないと考えている。「僕は映画や舞台も作りますし本も書きますし、いまはバラエティにも出ています。よく『役者からバラエティですか?』と聞かれますが、僕がなぜこの仕事を続けられているのかと言えば、言われたことだけをやっていないから。すべてがものづくりの作業なんです。小さい頃にプラモデルを作るのは自己責任でしたが、いま僕がやっている作業は1人ではできないことです」。

人との共同作業にやりがいを見出しているという坂上。「当然、映画も舞台も作りたいのですが、いまは信頼できる人たちと番組を作っている、信頼できる人がやりたい番組の手助けをさせてもらっているという感覚なんです。だからバラエティをやることにも、僕自身は違和感を感じていない。もちろん一緒に作っているからこそ怒る時もあります。『アングリーバード』についてもそうですが、僕だって『実際にお仕事をしたら、あんなに優しい穏やかな人はいないよ』なんて言われてみたいですよ。実際にそのつもりで行ったら、初日の2時間で崩壊しました(笑)」。

本作の見どころについてはこうアピールする。「かわいいし色使いもすごく好き。いちばん好きなのは、子どもたちが並んで道を渡っていくシーンです。大人として言いたいのは、人と関わっていかないと楽しい生活は送れないということです。人と関わるのが苦手な子でも、最後は活躍して救われる。やっぱりみんなつながっているんです」。

『アングリーバード』では不器用なレッドがだんだん友だちの輪を広げていくが、坂上自身もレッドにとても共感できたそうだ。そういう意味でもこれ以上にないキャスティングだと思った。【取材・文/山崎伸子】

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