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韓国映画界の奇跡!地味すぎるドキュメンタリーが大ヒットの不思議

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韓国映画界の奇跡!地味すぎるドキュメンタリーが大ヒットの不思議

今年のはじめ、韓国で公開された1本のドキュメンタリー映画が大ヒットし話題を集めた。そのヒットした理由のひとつが、あまりにも“地味”な内容、というのだから面白い。

その作品とは、日本でも12月に公開が決まった『牛の鈴音』という韓国映画で、老いた農夫と一頭の老いた牛の暮らしを見つめたドキュメンタリーだ。

ストーリーはこんな感じ。79歳になる農夫のチェ爺さんには、30年も共に働いてきた牛がいる。今では誰もが耕作機械を使うのに、チェ爺さんは牛と働き、牛が食べる草のために畑に農薬をまくこともしない。しかしある日、かかりつけの獣医が「この牛は今年の冬を越すことはできない」と告げる、というやはり“地味”な内容だ。

しかしながら、今年1月15日に韓国で公開されるや、またたく間に口コミで広がり、37日目に100万人突破。公開7週目、8週目にはついに大手メジャー作品を抑えて2週連続興行成績ベストワンを獲得し、最終的には累計約300万人を動員した。これまでの韓国におけるドキュメンタリー映画の最高動員記録が、マイケル・ムーア監督作『華氏911』(04)の45万人というから、まったく驚きの数字と言える。

韓国では映画を観る主流は20〜30代の若い世代。テレビ番組で紹介され、ネットで“面白そう”だと評判になり、鑑賞後も話題が盛り上がり、年配の層まで飛び火した。

働く老農夫の姿や老牛との絆などを静かに描いている本作が、若い人の心を掴んだ結果になった。このことは、今の若者の心の状態を示すものとして、“なぜこの静かで地味な映画がこれほどの大ヒットになったのか”について議論が巻き起こっている。

騒がしい映画が多い昨今、このような地味ながらも落ち着いた作品に目を向けてみると一味違った思いがこみ上げるはず。この作品、日本でも秘かな話題を呼びそう。【Movie Walker】

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