綾野剛「天才じゃないから努力が必要」クールなイメージに隠れた“努力型”の素顔

インタビュー

綾野剛「天才じゃないから努力が必要」クールなイメージに隠れた“努力型”の素顔

綾野剛が主演を務める『新宿スワン』の第二弾『新宿スワンII』がいよいよ1月21日(土)より公開となる。先日行われた完成披露のプレミアイベントでは、会場の隅々まで届くように精一杯に思いを伝えようとする綾野がいた。あたかもそれは、一人一人に手を伸ばすかのように。綾野はいつも、愛する作品を届けるために“全力”だ。一体、その原動力とは何なのか?

本作は、歌舞伎町のスカウトマンたちの攻防を描き、大ヒットを記録した人気コミックを映画化した第二弾。綾野が、破天荒で純情な愛すべき主人公・龍彦を演じている。インタビューがスタートするや、「明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします」と切り出した綾野。クールなイメージのある彼だが、クシャっとした笑顔を見せて周囲の緊張を見事に解いてみせる。女性だけでなく、男性からも愛される龍彦と、綾野の姿が重なる。

一文無しで歌舞伎町にやってきた龍彦がスカウトマンとして成長する姿を描いた前作。今回は、さらに頼もしく龍彦が成長する。原作でも人気の高い「横浜王国編」をもとに、シマ拡大のために、龍彦属する新宿バーストが横浜に乗り込んでいく。龍彦にとっての新天地が描かれるが、綾野自身は新しい環境に飛び込む時には、「郷に従え」という気持ちを大事にしているそう。

それは、本作のロケでも実感した。「『郷に入ったら郷に従え』ということが、一番のコミュニケーション。例えばロケをする時にも、そのロケ地に対するリスペクトが大事だと思っています。撮影をする時って、道を止めたりすることをはじめご迷惑をかけることばかりなんです。でも街に対してもリスペクトを持っていれば、きちんと受け止めてくれる。そういう姿勢で臨めば、豊かな関係性になれると思っています」。

思えば俳優というのは、作品が変わるごとに常に新しい現場に飛び込んでいかなければいけない仕事だ。綾野は「慣れていることを捨てて、新しいことに進んで行くというのは、性に合っている」と語る。

「毎朝、自分が違う顔になって、違う感覚になっているだろうということを受け止めることから、朝は始まると思っています。それには、捨てて行く勇気が必要です。新しいものを得るために捨てて行く。いわば、パソコンと一緒。パソコンって1テラの容量を入れたとしたら、重くなりますよね。ましてや1テラの容量を使い切ったら、もう他のものは入らない。それと同じで、体に馴染んだものを捨てて、容量を空けていく。僕のキャパってたぶん、256バイトくらいしかないんですよ。だから過去のものや、今の自分にとって必要ないものは捨てて行かないといけない」。

いわば、“破壊と構築”を繰り返す生き方。「次々と構築していくことで可能性を見つけていける、天才のような人もいる。でも僕は天才じゃないから、圧倒的な努力が必要なんです」と言うように、目の前のものにすべてを注ぎ込むために、過去を捨てて行く努力をしている。「破壊と構築を繰り返す生き方がマストともベストとも思っていません。その人にとってのマストやベストのものを紡げるように時間を重ねることが、魅力的なこと。それは努力も同じで。努力は報われるなんて、100パーセントあり得ません。努力は報われるためではなく、成長するためにある。報われるために人生があるのではなく、生きるために人生はあるから」。

熱い言葉がほとばしるが、「今をどう生きるかによって未来が変わってくる。未来を想定すると今がおろそかになってしまう」と今、この瞬間を全力で生きるのが、綾野のスタンス。なぜこれほどまでに役者という仕事に全力で、ストイックに打ち込むのか?その理由はこの言葉に込められていた。

「僕は今、自分が楽しむためにすべてをやっていない。今年もファンの皆様からいただいた年賀状にすべて目を通しましたが、僕の出演した映画で人生が変わったという方もいるわけです。その言葉を受けて、僕の人生観も変わってきました。みんなが幸せになるために、やっているんだと思います」。作品を生み出したその先に、観客がいることを何より大事に思っている。

劇中の龍彦は「俺がスカウトした女の子は、必ず幸せだって言わせます!」がモットーの幸せ請負人。若き頃は「闇の中にいた」と言う綾野だが、「闇の中で想像した光はやがて輝きとなった。今たくさんの方々の力を借りて、自分はこの場にいられる」と役者という自ら進んできた道が、誰かの光となれる可能性があることに、「感謝です」と心を込める。どん底から這い上がり、太陽のような男となった龍彦。やはり綾野剛のハマり役だ。【取材・文/成田おり枝】

スタイリスト:澤田石和寛(SEPT)
ヘアメイク:石邑麻由
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