ピーター・グリーン
Peter Winter
一人の精神分裂症患者の不安定な内面に鋭くメスを入れた異色作。ニューヨーク大学で映画製作を学び、卒業後は数々のCM、ミュージック・ビデオ、短編映画を手掛けるかたわら、撮影監督としての顔も持つ映像作家ロッジ・ケリガンが監督・脚本・製作を務めた初長編。撮影は「スモーク」のテオドロ・マニアチ、音楽はN.Y.を拠点に活躍するギタリストのハーン・ロウ、音響はトニー・マルティネス、美術はタニア・フェリアー、編集は「ナイト・オン・ザ・プラネット」のジェイ・ラビノヴィッツ。主演は「ユージュアル・サスペクツ」の怪優ピーター・グリーン。93年度シカゴ映画祭シルバー・ヒューゴ最優秀デビュー作品賞受賞。
ピーター(ピーター・グリーン)は自分の頭の中に受信器が、爪の間には発信器が埋め込まれていると信じており、得体の知れない不安や恐怖に、終始苦しめられている。黙っているといくつもの正体不明の“声”やノイズが頭へと飛び込んできて、彼の精神を錯乱させようとしていた。鏡を極度に恐れる彼は、車のミラーを全て割り、窓ガラスも破ってタブロイド紙を貼り付けている。ピーターの正気を危ぶんだ家族が、彼の娘セシルを里子に出してしまったため、彼は愛する娘を捜すために生まれ故郷の町へ帰ってきた。古ぼけた車で町をゆっくりと徘徊する彼はセシルと同じ年頃の子供には異常に敏感で、病的な視線で車窓から少女を見つめる。同じ頃、連続少女殺人犯人を追っていたマクナリー刑事の捜査線上に、ピーターが浮かんだ。確かに事件とピーターの足どりは奇妙に一致していた。一方、ピーターは年老いた母親が一人で住む実家を訪ねた。重苦しい雰囲気の夕食の後、彼は部屋に引きこもる。母親は彼が泊まるのに10ドルを要求した。翌朝、母親は電話でセシルの養子先に、息子が訪ねてきたことを告げる。ピーターは鋏を使って頭の中の受信器をえぐりだそうとし、送信器を取り出そうとして爪を剥いだ。図書館で幼児たちの写真が載った書物を読みあさる彼は混乱して、書棚に何度も頭を打ちつける。そして、彼が去った後には、セシルに似た少女たちの死体が残されていた。ピーターはついにセシルを見つけ、娘を海辺に連れていく。その時、マクナリー刑事が現れ、セシルを救うために彼を射殺した。だが、ピーターの車のトランクを開けると、少女の死体と見えたものはセシルに贈ろうとしたぬいぐるみだった。
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