ジョン・ウォッジャ
George Murphy
クリスマス直前のニューヨーク、失業中で家を追い出される寸前の男が金と行方不明の親友を探してマンハッタンをさまよう姿を通して、ニューヨークの底辺の過酷な状況を浮き彫りにする人間ドラマ。監督・脚本・編集はイランで『水・風・砂』などを発表したアミール・ナデリで、苦節の末のアメリカ進出第一作。製作はラミン・ニアミ。ほぼ全編マンハッタンの街頭でロケされた圧倒的な密度の映像で、撮影を担当したのはジェームズ・カラナン。音楽は「ラスト・タンゴ・イン・パリ」のスコアで有名なジャズ・ミュージシシャン奏者のガトー・バルビエリ。主演は本作にオーディションで選ばれ、映画はこれが初出演のジョン・ウォッジャ。
ジョージ・マーフィー(ジョン・ウォッジャ)は失業中の記者、自宅アパートは立ち退き勧告を受け、滞納家賃を払わなければ明日にでも追い出されてしまう。妻子は実家に預けている。彼は親友のトムに頼めばなんとかなるかもしれないと思うが、彼の勤め先に行ってみるととっくの昔に辞めており、行方も分からない。ジョージはマンハッタンを歩き回りながら電話で友人たちに借金のことと、それ以上に熱を込めてトムの消息を訊ねるが、この二、三カ月は誰も彼をみていない。借金の方も、不景気のなかで友人たちもそろって失業に脅え、余計な金はない。それでも古巣のニューヨーク・タイムズにいるアレックスが、洋服屋をやっている伯父に頼めばなんとかなるかもしれないといい、4時にその店で待ち合わせする。ジョージはトムの妻に会い、トムは酒に溺れて、書きかけの本も壁にぶつかったまま消息を絶ったことを知る。トムの影を追ってジョージはマンハッタンのスラムに足を踏み入れる。トムはホームレスの現状に怒って抗議運動などを画策しながらも、どんどん酒に溺れていったらしい。彼は人々に強烈な印象を残していたが、今どこにいるのかは誰にも分からない。午後、ジョージはアレックスと約束した洋服屋に行くが、主人はなにも聞いてないと言って追い返す。洋服屋の店員が何か言いたそうに彼の後を追った。ジョージは公衆電話から妻と娘に電話をかけ、自分なら大丈夫だと告げて受話器を置き、電話番号を書いた手帳を引きちぎって雑踏のなかにばらまく。絶望に半ば朦朧としたジョージの目には、銀行の看板ばかりが次々と飛び込んできた。無人の街角に立つ雄牛の彫刻。そこへやっと彼を見つけた洋服屋の店員が声をかける。アレックスは約束を守ったのだが、ケチな店主が聞く耳を持たなかったのだ。アレックスに店の仕事を紹介してもらったという彼は、「あなたに受け取って欲しい」と言って札の束をジョージに渡し、足早に去った。ジョージは雄牛の像を相手に、喜び狂ったように踊り始める。
監督、脚本、編集
製作
製作総指揮
撮影
音楽
録音
字幕
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