ラウラ・アントネッリ
Marie
現代のパリを舞台に、ひとりの女の心のうちに蠢めくセックスへの凄絶な妄執と、愛情から淫靡な復讐へと展開していく錯綜した心理を強烈なエロティシズムと冷徹なリアリズムで描く。製作はエットーレ・スパニョーロ、監督は「さらば美しき人」のジュゼッペ・パトローニ・グリッフィ。フランチェスコ・バリッリの原作に基づいてアルベルト・シルヴェストリとコンチャ・オンブリア、ルチオ・フルチが脚本化。撮影はファン・アモロスとハンス・ブルマン、音楽はエンニオ・モリコーネが担当。出演はラウラ・アントネッリ、トニー・ムサンテ、フロリンダ・ボルカンなど。
パリでトップクラスの広告代理店を経営するマイケル(トニー・ムサンテ)は恋人のヘレン(フロリンダ・ボルカン)のアパートを出る時、ある女性を見かけて愕然とした。女性はヘレンのアパートの管理人マリー(ラウラ・アントネッリ)だった。16年前の夏、マイケルがフランスの避暑地で遊んで棄てた女……。マリーを見かけたマイケルの脳裏にはつぎからつぎへと16年前の夏の情景が浮かんできた。マイケルはすれ違った女が紛れもないあのマリーであることを確かめたい衝動にかられ、ヘレンが旅行に出たあとすぐにマリーの部屋のベルを鳴らした。ドアが開き、現われた少女を見てマイケルは思わず息を呑んだ。16年前のあのマリーそっくりの少女がそこに立っていたからである。彼女の名はジェニーン。「母が中でお待ちしております」という彼女の言葉に誘われてマイケルは室内に。やはりジェニーンの母はマリーだった。暫くの沈黙のあと、ぽつりぽつりと昔の思い出を語りはじめた二人は、ジェニーンが外出すると激しくもとめ合った。マリーにとってそれは16年前の官能がひとつひとつ、体の芯を突きあげるような快感を伴なって甦ってきた。翌朝、ベッドルームで目を覚ましたマイケルは自分の信じ難い姿に気づいた。両手首をベッドに縛りつけられているのだ。はじめ、マリーの戯れだと気軽に考えていたマイケルもやがて、彼女の「もう二度と私を置いていかないで」という言葉にことの真相を感じはじめた。マリーは16年間、一度たりともマイケルのことを忘れたことがなかったのだ。そして、二人の再会が、彼女の仕掛けた恐るべき罠だったことにも。その日からマイケルの悪夢の日が始まった。彼が食事を拒むと身体中にいちごやスープ、ワインなどをなすりつけ、それをまるでもてあそぶように舌でなめまわすマリー。彼女の狂乱の愛欲は昼となく夜となく続いた。娘のジェニーンも母の忠実な下僕で、マリーが外出する時はかわりにマイケルを見張った。やがて肉体と精神の限界まで追いつめられたマイケルは、もはや娘のジェニーンを味方につける以外に脱出の方法はないと決心し彼女の誘惑にかかった。娘盛りのジェニーンは案の上、マイケルに身を委ねてきた。しかし、二人が愛し合っているところを発見したマリーは怒りと嫉妬に狂い、マイケルにさらに厳しく迫った。そんなある日、ちょっとしたスキに脱出を試みたマイケルとマリーが揉みあい、彼女の持っていたナイフがマイケルの腹にささった。マイケルの傷の手当てをしたのは娘のジェニーンだった。この事を境に母娘の立場が逆転し、マイケルに愛を感じはじめていたジェニーンが主導権を握り、マイケル同様にマリーもベッドに絞りつけられてしまった。一方、旅行先からマイケルに何度、電話しても行方がわからないヘレンは心配になり、アパートに戻ってきた。そして彼女の息子がマリー母娘の住む部屋に入り込み、マイケルの免許証を持って帰ってきた。おどろいたヘレンは、マリー母娘の部屋へ。戸口に出てきたジェニーンの腕にはヘレンがマイケルにプレゼントしたブレスレッドがあり、彼女はそれを見逃さなかった。自分の部屋に急ぎ戻ったヘレンは警察に電話するのであった。
監督
脚本
脚本
脚本
原作
製作
撮影
撮影
音楽
字幕
[c]キネマ旬報社