フランス・ドゥニャック
Clotilda
少年の日に体験した衝撃の恋を、三十年の歳月を経た今、再び深い感慨をこめて綴った半自叙伝的恋の物語。製作はセルジュ・シルベルマン、監督・原作(二見書房刊)・脚本は推理作家セバスチャン・ジャプリゾの名で知られ、これがデビュー作のジャン・バティスト・ロッシ、撮影はエドモン・リシャール、音楽はエリック・ドゥマルサンが各々担当。出演はフランス・ドゥニャック、オリビエ・ジャヤジャ、マリー・デュボアなど。
十五歳になってもドニ(オリヴィエ・ジャヤジャ)の学校生活は一年生の時と少しも変らなかった。新しい事といえば、学校の食堂をドイツ軍が占領した事と、彼に新しい綽名がついた事ぐらいだった。そんな平凡な毎日に変化がきざしたのは、大の苦手のガルガンチュア(J・ガバン)への点数稼ぎに病院へ慰問に行った時だった。その日は強い雨が降っていた。傘も持たずに濡れて病院を訪れたドニは、美しい修道女クロチルド(フランス・ドゥニャック)に出会う。ドニの友人達とは顔馴染みの彼女、ドニの胸にかすかな妬ましさが走った。「あのひとの名はクロチルド、女子寮の先生だぜ。君も好きなのかい」そう教えてくれた友もいた。ドニは病院でクロチルドに会うたびに、彼女への想いがつのる一方。まだ恋という言葉すら知らぬ彼に出来る事といえば、自分の家と方向の違う彼女を送ったり、彼女のボタンを手に入れて大切にしまっておくぐらいだった。むろん、そんな彼の心の中が読めないクロチルドではなかった。彼女はドニより十歳も年上、しかも神に生涯を捧げている身だ。ドニがどんなに想いを寄せても、それに答えられる彼女ではない。でも、彼女にはドニの心がいとおしかった。「いいわ、ラテン語の教科書でも持って寮へいらっしゃい」と口に出てしまう彼女。そんな優しい思いやりはいつしか恋に変り、親友の部屋を借りるまでに発展した。日曜の昼下り、部屋を掃除していた彼女の前にドニが訪れた。初めてみる彼女の下着姿。腕を伸ばし、抱きしめ、やがて二人は結ばれた。そして町に爆弾の落ちた日、一人息子の身を案じた両親はドニを疎開させようとしたが、今や彼と離れられないクロチルドは、彼女の母の家で面倒をみると偽り、ドニを連れ出した。戦争が始まってから誰もいなくなった家は、世間の目を欺く恋人達の夢を結ぶにふさわしく、静かで美しかった。夏の明るい陽ざしの中で愛をむさぼる二人。修道服をドレスに換えたクロチルドは、めっきり大人びたドニと並ぶと少女のように愛らしい。そんな二人の仲が村人達の好奇の目にさらされるようになった頃、ドイツ軍は敗北を続け、フランス解放の日が訪れた。そして戦争の終りは、恋人達にとってもその隠れた恋の終止符を打つ時であった。村の噂でやって来た院長は彼女を怒るが、神に捧げた誓いの指輪を返す彼女に、もはや過去に対する未練はない。大切なのはドニとの愛。やがてクロチルドとの仲を引き裂こうとする両親のはからいで、ドニは遠くの寄宿学校に入る事となった。出発の日、友人の知らせで駅に駆けつけたクロチルドは、ドニの手を握りしめながら悲しみをじっとこらえた。のばし始めた髪が背にとどく頃、ドニに再会できるだろうか、そして私達の愛は? 悲しみと不安にさいなまれるクロチルドには、間もなく訪れる冬をつげるかのような冷たい風が身にしみた。
Clotilda
Denis
La Superieure
La Mere
Poupee
Gargantua