シーラ・マッカーシー
Polly Vandersma
天真燗漫ながら傷つきやすい神経を持った一人の女性の目を通して、何が真実で何が偽りであるかを辛らつにファンタジックに描いてゆく。製作・監督・脚本・編集は女流監督のパトリシア・ロゼマで本作品が長編第一作にあたる。共同製作はアレクサンドラ・ラフェ、撮影はダグラス・コシュ、音楽はマーク・コーヴェンが担当。出演はシーラ・マッカーシー、ポールバイヤージォンほか。
トロントで独り暮らしをしているポリー(シーラ・マッカーシー)は31歳。タイプを打つのが大の苦手のキャリウーマン落第生の彼女は、パートタイムの秘書の仕事をあちらこちらで得て自活している。そんなポリーが今回得た職場、アートギャラリー“チャーチ・ギャラリー”は趣味の写真に入れ込んでいる彼女にとって願ってもない芸術的環境だった。しかしポリーは、ギャラリーのキューレーターで何か秘密めいたもののあるガブリエル(ポール・バイヤージォン)の中年女性の美しさと芸術への深い愛に惹かれてゆく自分を発見し大いにうろたえる。ポリーの生活は今やガブリエルとそれを取り巻くあらゆる事象に影響をうけ始めていた。そんな彼女にはガブリエルと性的関係にある女性メアリー(アン・マリー・マクドナルド)の存在が少し気にかかる。ガブリエルの誕生パーティの夜、ポリーはガブリエルから彼女が描いたという絵をみせられ、その美しさにすっかり魅了される。ところが自分の絵に自信のなさそうなガブリエルに、ポリーはその一枚を内緒で批評家(リチャード・モネット)に見せたことにより彼女の作品はたちまち人々の絶賛を集めることになる。こういった経験に勇気づけられたポリーは、自分でも気がつかなかった才能を認めてもらえたら、と趣味で撮った写真を匿名でガブリエルに送るが、一言で簡単にはねつけられてしまう。深く傷ついた彼女は写真を焼き捨てるが、偶然あの写真がポリーの作品であることを知ったガブリエルの慰めの言葉も耳に届かないほど、その傷は致命的だった。生き甲斐を失ったポリーはある夜真っ暗なギャラリーで、実はあの絵はガブリエルではなくメアリーが描いたものであることを知る。彼女に深い幻滅を抱いたポリーは、誤ってガブリエルの顔に熱湯をかけてしまう……ビデオカメラの前でこう告白を終えたポリーの心には、もはや安らぎが戻っていた。そして彼女の背後にはガブリエルとメアリーがにこやかに現れるのだった。
Polly Vandersma
Gabrielle St Peres
Mary Joseph
Warren
Japanese Waitress
Critic
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