古代ローマを知る漫画家・ヤマザキマリが描きおろし&徹底解説!パワー漲る『グラディエーターII 』は「燃費を考えていたら成立しなかった作品」

インタビュー

古代ローマを知る漫画家・ヤマザキマリが描きおろし&徹底解説!パワー漲る『グラディエーターII 』は「燃費を考えていたら成立しなかった作品」

古代ローマを舞台に、皇帝への復讐に燃える剣闘士<グラディエーター>の闘いを描き、第73回アカデミー賞作品賞、主演男優賞を含む5部門を受賞した『グラディエーター』(00)の“その後の物語”を描いた続編『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』が公開中。リドリー・スコットが再びメガホンをとり、前作でも登場したルッシラの息子ルシアスが剣闘士となり、力のみが物を言うコロセウムで待ち受ける戦いへと踏みだしていく姿を描く。

【写真を見る】「テルマエ・ロマエ」「プリニウス」を生みだした漫画家ヤマザキマリは『グラディエーターII 』で描かれる古代ローマをどう感じた?
【写真を見る】「テルマエ・ロマエ」「プリニウス」を生みだした漫画家ヤマザキマリは『グラディエーターII 』で描かれる古代ローマをどう感じた?[c]2024 PARAMOUNT PICTURES.

主人公ルシアスに扮するのは『aftersun/アフターサン』(22)のポール・メスカル。ルシアスの母親ルッシラはコニー・ニールセンが続投。ルシアスの才能を利用し、帝国での地位を狙う謎の奴隷商人マクリヌスをデンゼル・ワシントンが演じ、悪政はびこるローマ帝国の争乱に翻弄されていく屈強な将軍アカシウスにはペドロ・パスカルが扮している。

リドリー・スコットが生みだした伝説的名作の続編には早くも「前作に並ぶ傑作!」との声も。同じく古代ローマを舞台に「テルマエ・ロマエ」や「プリニウス」を生みだした漫画家ヤマザキマリは本作で描かれる古代ローマをどう見たのか。古代ローマを知り尽くすヤマザキに本作で描かれる古代ローマの魅力や、いま観るべきとおすすめする理由、そして本作のために描き下ろした特別イラストレーションの制作秘話を訊いた。

「古代ローマの水準の高さに対する驚きとリスペクトが伝わってきます」

「古代ローマを描いた映画作品はたくさんあるけれど、ここに来て史上最高のクオリティのものができていると感じました。そして、古代世界を再現するにはSFと同質の想像力が必要だということも痛感しました。リドリー・スコット監督が『グラディエーター』シリーズを手掛けるのは正解だと思います」と力を込めたヤマザキ。特にすばらしいと感じたのは舞台や衣装などの“時代考証”だという。「もちろん史術が軸にはあってもよくできたフィクションですから、いろいろとツッコミたくなるところもいっぱいあったけれど、再現された当時の景観、建造物、人々の衣装などに関しては、『ベン・ハー』や『クオ・ヴァディス』といった作品が作られていた60、70年前を踏まえると、ここまで進化したのか、と感心するしかありません」とローマを題材にした映画の歴史に触れ、しみじみ。

漫画家ヤマザキマリが映画『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』の見どころを語る!
漫画家ヤマザキマリが映画『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』の見どころを語る!

前作『グラディエーター』は、全世界で4億6500万ドル以上を稼ぎだし、2000年第2位の興行収入を記録する大ヒット映画。商業的成功だけでなく、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞などの賞を独占した伝説的歴史的スペクタクルだ。その名作の続編で描かれた古代ローマは圧倒的だったと唸るヤマザキ。「前作は作画の資料として何度も観ていて、当時は再現の水準の高さに関心していましたが、続編におけるクオリティはそれを上回っています。古代ローマの時代考証は日々の発掘調査や、研究家の検証によって情報は日々更新されていますが、そうした最新の知識も盛り込まれているはずです。衣装一つにしても本当に細かいところまで凝っていて、古代ローマの水準の高さに対する驚きとリスペクトが伝わってきます」と最新の時代考証と技術の掛け合わせにより、現時点での最高峰の表現だったと断言。「すべての場面を参考資料として観てしまうところがある」と本作の見方に触れたヤマザキは「自分が調べて得た情報がどのように再現されているのか、という目線でも観てしまいます(笑)」と、古代ローマを深く知るからこそ目がいってしまうポイントがあるとも話した。

ヤマザキが古代ローマを描く上で大切にしていることとは
ヤマザキが古代ローマを描く上で大切にしていることとは[c]2024 PARAMOUNT PICTURES.

現在、ヤマザキは「テルマエ・ロマエ」の20年後を描く「続テルマエ・ロマエ」を連載中。浴場もコロセウムもローマ帝国を統括するための政治力を司った、重要なエンタテインメントだったと語る。「円形劇場の催しも、浴場も、どちらも民衆を統括するための重要な政治力ですが、テルマエ・ロマエで展開される呑気な世界観とは緊張感があまりに違い過ぎて、思わず笑ってしまいました」そして、「この作品で描かれているこの時代はこれから大国ローマがどんどん退廃していく序章にあたりますが、あの2人の皇帝によってその気配が強調されていましたね」と、違う切り口でありながらも同時代を扱った物語が、この先のローマを見せる上でどう描くのかにも注目していたようだ。



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