ブリジット・フェデルスピール
Vivke
性の歓びの絶頂で、男と女の恐ろしい関係が露わになる、というドラマ構成をもったセクシー・サスペンス。製作・監督はヨハン・ヤコブセン、脚本をフィン・メトリング、撮影をマック・アールベルイ、音楽をエリック・フィーエンがそれぞれ担当している。出演はデンマークの女優ブリジット・フェデルスピールとプレベン・レルドルフ・ライ。
ある嵐の日、人里はなれた海辺で、一人暮しをしている未亡人ビブケ(B・フェデルスピール)の家の扉をたたく一人の男(P・L・ライ)があった。ビブケは道に迷ったその男を、一晩とめてやることにした。翌日、男は礼を言って外に出たが、夕方近くに、再び戻って来た。孤独の寂しさに耐えかねていた彼女は、その男をまた家の中に迎え入れてしまった。いつ知らず、彼女の心の中に愛が芽ばえ始めていたのだ。そしてある日、夫との思い出の丘に登った彼女は、指輪を土に埋め、新しい愛に生きることを誓うのだった。その時、第二次大戦中に地下運動を行なっていて、右腕に大きな傷あとのある男に拷問死させられた夫の記憶が、一瞬、彼女の脳裏をよぎった……。数日後、浜辺に出た彼女とその男は、情熱のほとばしるまま抱きあった。そしてある晩、紛失した拳銃の所在を問う彼女を、男はいきなり、ベッドに倒した。狂ったような愛のいとなみの中で、ビブケは男の右腕の傷あとをみた。しかし、性の歓喜の絶頂にいる彼女は、そのまま男を受け入れてしまうのだった。陶酔から醒めた時、彼女の手には、取戻した拳銃が握られていた。罪のつぐないを拒んだ男は、やがて、彼女の銃弾に倒れた。そして、再び、愛を失った彼女は、ひとり思い出の丘にたたずむのだった。
[c]キネマ旬報社