バタ・ジボイノビッチ
Tigar
戦略拠点の橋をめぐって展開される、ユーゴ・パルチザンとドイツ軍の攻防戦。監督はハイルディン・クルババッツ、脚本はプレドラグ・ゴルボビッチ、撮影はオグニエン・ミリチェヴィッチ、音楽はボヤン・アダミッチがそれぞれ担当。出演は、「ネレトバの戦い」のバタ・ジボイノビッチ、ほかにスロボダン・ペロヴィッチ、ボリス・ドボルニクなど。
一九四四年。ユーゴ山中に横たわる橋をめぐって、ユーゴ軍とドイツ軍の戦いが始まろうとしていた。ユーゴ軍はドイツ軍の撤退をはばむため、この橋の爆破をたくらんでいたがドイツの警備体制は強固であった。そこで、パルチザンのタイガー(B・ジボイノビッチ)をリーダーとする特命隊が組織されたが、この特命隊には、もう一人の参加者が是非必要だった。その一人とは、橋の建設者(S・ペロヴィッチ)だった。ドイツ軍もこの技師を幽閉しようとしたが、タイガーの機転で、彼をゲシュタポから救い出すことができた。技師は一行に同行したが、目的が橋の爆破と知ると、協力を拒んだ。この、技師と特命隊の作戦上の不統一は数々の困難を生み、隊員のひとりの命を失うことにもなってしまった。また、隊員の中に裏切り者がいたため、彼等は爆薬を失ってしまった。士気喪失して目的の橋に到着した彼等は、逆に裏切り者のスパイを利用、敵の爆薬を盗み出した。さらに、タイガーは保安隊長を人質にし、偽の点呼命令を出させた。そのすきに、爆破の名手ザバトーニ(B・ドボルニク)が爆薬を仕掛けにかかったが、橋の急所を一ヵ所さがさなければならなかった。彼は誠実な説得によって技師から急所を聞きだした。その時、ドイツ軍の撤退部隊は目前まで迫っていた。そして、タイガーの工作は見破られ、ドイツ軍と特命隊の間に、壮絶な戦いが開始された。ザバトーニは爆薬を仕掛け終ったところで、敵の銃弾に倒れてしまった。爆破のスイッチは、技師の手ににぎられた。彼は巨大な戦争に敗れたのか、それともユーゴの平和な明日を夢みていたのか。ユーゴの山中深く、その静寂を切りさくような爆音が炸烈したのは、その一瞬の後のことだった。
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