スロボダン・ペロヴィッチ
Djuka
しょぼくれたボクサーくずれの主人公の日常生活の断面を、透徹したリアルな眼によってえぐり出し、奇妙にもおかしい現代の〈メルヘン〉をとらえた作品。監督・脚本をゴルダン・ミヒッチとリュビシャ・コゾマラが共同で行ない、撮影イェジー・ウォイチック、音楽ゾラン・フリスティッチ、美術ウラディスラウ・ラシッチ、出演はスロボダン・ペロヴィッチ、ミラン・イェリッチ、ヨヴァンカ・コトライッチ、アナ・マティッチ、イェリサヴェータ・サブリッチなど。
ボクサーを続けるには年をとりすぎたデュカ(S・ペロヴィッチ)は、いかがわしい仕事にかかわり合いを持ち始めた。友人の肉屋ノスケによって引き入れられたのだ。彼らは村々で特に死んだ羊を買い、ベオグラードに運び、そこで売るのである。羊が見つからないときは、おりをみては棍棒などを使ってごっそり羊を殺し、仕事がうまくいくようにした。ある日デュカは、どさ回りのバレー団が解散してしまったので、今や行くあても判らずにいる血縁にあたるダンサーに会った。デュカがその男を自分の家に連れ帰ると、病院から逃げてきた老いた母親もいた。デュカはいよいよ金に困った。そこへノスケが小さな商店の金庫を襲うことを提案した。しかし襲撃の手順が狂い、ダンサーの男が通行人を殺してしまい、ノスケは警官から傷をうける。そうこうするうちに老いた母親は住いを引き払わねばならなくなった。デュカは、やむなく一行をホテルへ引き入れた。今度は、彼らは、居酒屋の主人ビレクを襲おうとする。ビレクがダンサーに殴りかかったことから、喧嘩となり、ダンサーはビレクを殺してしまった。一行はビレクから金を奪い、車のトランクに死体をつめ込み、ダンサーと別れ、おふくろと一人の踊り子を連れて、逃げ出した。しかし、やがて老母は死んだ。そして、踊子もダンサーと悪事を働こうとして、白い雪を血に染めて倒れた。いま、行くあてもなくみぞれの中にたたずむデュカ。その前に、新しい踊り子をつれたダンサーが、奇妙な笑いをうかべて、近よって来た。デュカの顔にも苦い笑いが浮んだ。
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