イムレ・シンコビッチ
Liszt
十九世紀ハンガリーが生んだ最高の作曲家フランツ・リストの生涯を、愛人カロリーナ・ビットゲンシュタイン侯爵夫人との恋を中心に描く。監督はマルトン・ケレチ、脚本はレオニード・デリ、イムレ・ケシ、撮影はイシュトヴァーン・ヒルデブラント、音楽はフェレンツ・ファルカス、ピアノ演奏はジョルジ・シフラ(リスト)、スビャトスラフ・リヒテル(ショパン、ベートーベン)が各々担当。出演はイムレ・シンコビッチ、アリアドナ・シェンゲラーヤ、クララ・ルーチコ、イーゴリ・ドミートリエフ、ラリーサ・トレムボベリスカヤ、イーゴリ・オーゼロフなど。
ハンガリー生れのフランツ・リスト(I・シンコビッチ)は、幼い頃から天才ピアニストとしてずば抜けた才能をみせ、今は芸術の都パリでサロンの人気を集めていた。リストは、芸術に理解が深いマリー・ダグー伯爵夫人(K・ルーチコ)の励ましで、世界一のピアニストといわれるタールベルグとの弾きくらべに勝ち、センセーションを呼んだ。そして、夫を捨てたダグー夫人とリストは、新しい生活を築き、三人の子供を産んだ。ピアノの神様とたたえられ、ヨーロッパ各地の演奏会は輝やかしい成功の連続だった。そんな中で、どのコンサートにも必ず姿を見せ、熱い視線をリストに送る美女がいた。ロシアの貴族カロリーナ・ビットゲンシュタイン侯爵夫人(A・シュンゲラーヤ)である。十四年に渡るダグー夫人との生活にもピリオドが打たれた。ペテルブルクでの慈善演奏会で、大金を寄付して去ったカロリーナに礼をのべるために彼女の大邸宅を訪れたリストは、夫と別居し、音楽や書物に親しみながらわびしい生活を送るカロリーナの悲しげな瞳に惹かれた。芸術を語り、愛の夢にひたる毎日が続いた。リストにとってカロリーナこそ生涯捜し求めていた理想像であった。しかし結婚の前には多くの障害が横たわっていた。その頃リストは、音楽家にとって最高の栄誉であるワイマールのサクソン公国の音楽監督に任命された。彼は、カロリーナの愛を得て音楽の奥義をきわめようとした。カロリーナは愛のない夫と離婚し、リストと結ばれる糸口をワイマール大公妃に求めようとした。革命と戦争でごったがえしている中、離婚許可はおりなかった。彼女は激しいショックのあまり、宗教生活に入った。年月は流れた。年をとって身体が弱ったリストは祖国ハンガリーに戻り、国立音楽アカデミーの総裁として後進の指導に当ることになった。しかし、カロリーナの面影は忘れることができず、ある日突然彼女を訪ねる。カロリーナは別離してからのリストの作曲活動をきびしく批判した。それは愛すればこその言葉だった。これが生涯の別れとなり、間もなくリストは七十四歳の生命を閉じた。
監督
脚本
脚本
撮影
音楽
音楽演奏
音楽演奏
字幕監修
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