ヤン・スエ
Chiang Tai
港の利権をめぐって対立する労働者と悪徳ボスの戦いを描く空手映画。製作はピーター・プーン、監督はチョイ・タクが担当。出演は「燃えよドラゴン」のヤン・スエ、チャーリー・チャン、チャン・ファンなど。
貧乏な百姓の子として育ち孤児になったサン・ウェイ・タット(C・チャン)は空手道場で武術の練習を重ねていたが意地の悪い先生の息子を決闘の末、殺してしまい、自ら自分の手を石で打ちくだいて二度と戦わないことを誓い、名もチャン・サンと変えてとある棧橋の荷揚げ作業員の仲間に入って働くようになった。ある日、この棧橋を独占して禁制品の荷揚げに利用しようとする組織のボスがやってきて、労務者たちの立ち退きを要求した。だが労務者たちには死活問題であった。怒りに燃えたチャン・サンの友人チュー・ヘンは港のボス、チャン・ホーの屋敷に乗り込んだが、翌日死体となって発見された。そんな労務者の騒ぎに業を煮やしたリーは、ゴリラのような怪力の持主チャン・タイ(Y・スエ)を連れて乗り込んできた。チャン・タイはリーの命令でチャン・ホーの首の骨をねじ折って殺した。さらに労務者たちの長であるロー親父をも殺してしまった。その頃、この港に若い娘がたどり着いた。それはサン・ウェイ・タットの行方を探し求める先生の娘、彼が殺した男の妹カム・リン(C・ファン)だった。だがチャン・サンはあくまでもサン・ウェイ・タットであることを認めようとはしなかった。そうするあいだにも、怪物チャン・タイを連れたリー一味と、労務者たちの戦いは激しくエスカレートしていったが力の差はどうにもならず、労務者たちは次々とチャン・タイのために全身の骨をバラバラに砕かれて死んでいった。この有様を見るに見かねた老人たちは、翌日の正午までに全員が立ち退くことを約束して降服した。翌朝、労務者たちは住みなれた家を引き払って引越しを開始した。カム・リンはチャン・サンに、兄殺しを後悔するなら男らしく戦って死をもって償えと訴えた。正午、チャン・タイを連れたリーが棧橋に姿を現わした。無人の棧橋前の広場にただ一人、サン・ウェイ・タットにもどったチャン・サンが待っていた。怪力チャン・タイを相手に、三ヵ月ぶりで死力をつくして戦うサン・ウェイ・タット。長い死闘の末、ついにチャン・タイは血を吐いて死んだ。次はリーの番だった。傷だらけのウェイ・タットは必死に戦った。ついにリーは脚の骨を折られて降服した。かくして棧橋には、ふたたび平和が訪れ、ウェイ・タットを指導者に労務者たちは働き始めた。
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