シルヴィア・クリステル
Emmanuelle
夫の赴任地バンコックでさまざまな性体験を重ねる若妻エマニエルの自由奔放な性生活を描く。製作はミシェル・ショケ、監督は写真家出身のジュスト・ジャカン、エマニエル・アルサンの同名小説をジャン・ルイ・リシャールが脚本化、撮影はリシャール・スズキ、音楽・主題歌はピエール・バシュレが各々担当。出演はモデル出身でこの作品が本格的なデビュー作になったシルヴィア・クリステル、アラン・キュニー、マリカ・グリーン、ダニエル・サーキイ、ジャンヌ・コレティン、クリスティーヌ・ボワッソンなど。
秋の日のある朝。パリのアパルトマンの一室で眼を覚ましたエマニエル(S・クリステル)は薄いガウンを羽織ったまま寝室からキッチンへ降りた。朝の陽ざしがカーテンを通してふりそそいでいる。友達のマリーから電話がかかってきた。マリーはどうやらエマニエルを空港まで見送りに来るつもりだ。彼女は今日、タイのバンコックへ旅立つことになっていた。外交官である夫のジャン(D・サーキイ)は一足先にバンコックへ赴任していてあとからエマニエルが行くことになっていたのだ。飛行場へは彼が出迎えにきていた。久びさの邂逅、二人は蚊帳の中で激しく愛し合った。バンコックは乾いた空気が肌に心地よいエキゾチックな町である。そんなエトランジェの気安さで生活を楽しんでいるように見えた。なかでもエマニエルが加わることになったフランス人の集まりはとりわけサロン的ムードが濃く男も女も自由に交際していた。ある日の昼下がり、バンコックの庭園でパーティが催された。ここに集うのは気ままな独身の男女、外交官、芸術家といった人たちである。エマニエルはここでさまざまな男女と出会い、やがて彼らによって大きく変わっていくことになった。マリー・ルイズ(J・コレティン)、カモシカのような肢体を持つ奔放な少女で、彼女はパーティのあとエマニエルの屋敷を訪ねてくる。性への好奇心が旺盛で、エマニエルにあけすけな質問をして顔を赤らめさせたあげく、彼女の前で自慰を始めた。アリアンヌ夫人(C・ボワソン)は性的に充たされない有閉マダムでレズビアン趣味がある。エマニエルをスカッシュに誘ったとき、彼女を抱きしめ、それから時々更衣室で彼女を誘惑するようになった。ビー(M・グリーン)、アメリカ人だがたくみなフランス語を話す美人で、エマニエルは姉を慕うように魅かれ、やがて深く愛するようになっていく。さらにエマニエルは問題の男マリオ(A・キュニー)とめぐり逢う。彼は社交界でも特異な存在である。それはひとえに彼のもっている不思議な性の哲学のせいによるのだが、女は誰でも彼の哲学の洗礼を受けることになっていた。“文明人の性というのは複数セックスでなければならない。単数のセックスではなく二人以上と肉体関係を持ちたい。それも時や場所を選ばずに。それを私は反文明のセックスと呼び、そうした性の中にこそ真の喜悦を発見していくべきである”。これが彼のテーゼだった。エマニエルはマリオにとってそうした哲学を実践するにまたとない素材なのである。ある一夜、マリオとデートすることになった。食事のあと、彼はエマニエルに己れの主張を説きながら、さまざまな場所でさまざまな男たちと性関係を持たせる。アヘンの巣窟で輪姦させ、キック・ボクシングの勝者に彼女の肉体を提供した。こうした一夜の、恥辱としかいいようのない体験のあと、エマニエルの表情は不思議にさわやかだった。マリオのいう性の自由の世界に魅せられつつあったのかも知れない。
Emmanuelle
Mario
Bee
Jean
Marie Louise
Arianne
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