ジャック・デュフィロー
Colonel Buttiglioen
不条理な軍隊を諷刺したコメディ。製作はアルフォンゾ・ドナティ、監督はミーノ・ゲリーニ、脚本はカステラーノとピポロ、原案はマリウス・マレンコ、撮影はアルトゥーロ・ザバッティーニ、音楽はジャンニ・ボンコンパニが各々担当。出演はアルド・マチオーネ、ジャック・デュフィロー、ミシェール・ガンミノなど。
イタリアのザンジバル市に在駐する第四連隊の連隊長は、ブチリョーネ大佐(J・デュフィロ)。彼の父親も軍人でその父親によれば、大佐は父親がビスマルク伝を読んだ晩に作ったとかで、聖バラバラの日に生まれた。因に聖バラバラは軍隊の主護聖人である。そればかりではない。大佐が生まれた日、彼をとりあげたのは軍医で、洗礼は従軍司祭が行なったという、何から何まで軍人的因縁の中で生まれ、彼も父親同様のコチコチの軍人にならなかったら不思議である。事実、彼は士官学校を出ると、その徹底した生まじめな軍人精神のおかげで昇進に次ぐ昇進、これまで感謝状、勲章を受けたことは数え切れないくらいで、末は大将になることは間違いなかった。今年も第四連隊に多数の教育召集兵が入ってきた。ところで、どこの連隊にも、いわゆる鬼軍曹はつきもので、ザンジバル兵営の鬼軍曹マスティノ(アルド・マチオーネ)は猿みたいな顔をしていていつも愛犬ブルテリアを連れている。軍曹の直属上官はベイジ大尉(M・ガンミノ)だ。新兵たちがマスティノ軍曹にしごかれながら珍妙な訓練が進められている間に、ブチリョーネ大佐の身辺にも妙チキリンなことが頻発するのだった。例えば大佐が参謀本部の資材課に、電話で八〇箱の運動靴を発注し、一七〇〇足の左足の靴が届いたので再発注をすると、今度も左ばかり一七〇〇足が送られてきた。しかも全部Sサイズだった。「わしの部下は片足の小人ばかりと思っているか」と大佐は怒鳴っている。大佐は参謀本部の資材課に電話をかけているつもりだが、彼の間違いか、電話に出ている相手は教会の司祭で互いに話がトンチンカンで通じない。またこんなこともあった。ある伍長を軍司令部に至急伝令としてオートバイで行かせると途中で伝令からSOS無電でバイクが故障のため停まらなくなった、どうしたら停まるかといってきた。すると、大佐がその無電を受け、伍長にガソリンがなくなるまで走れと命令した。だがガソリンは容易になくならず、バイクはそのまま北極圏まで突っ走って行った。勇ましいラッパの音と共に、ついに新兵訓練最後の日がやって来た。いよいよ宣誓式が行われる晴れの日である。営庭に全員が整列した。あとは軍司令官の到着を待つばかりとなった。ところが意外な事が起こった。司令官はヘリコプターに乗り、遥か空中から閲兵したまま、あっけなく引き上げていってしまったのである。やむなくブチリョーネ大佐は独りで宣誓式をとり行うことになった。ところが意外なことは一度ではすまなかった。大佐が新兵の前で宣誓文を読み上げ新兵たちに祖国イタリアへの忠誠を誓うことを誓わせたとき、偶然に石畳の上の手榴弾をふんずけたのだ。突然、大音響とともに手榴弾が爆発し、一瞬のうちに大佐はこの世を去った。ブチリョーネ大佐の最後もその人柄にふさわしく突撃一番であった。彼は真っすぐ昇天し、天国にいる将校たちに迎えられた。そして、ここでも彼の生まれながらそなわった軍人精神は変わらなかった。彼は早速そこで将校たちの中に長髪の青年士官を見つけ、明日までに髪を切ってこいと命令するのであった。
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