ニコラ・シミッチ
Cavka
「平和の谷」以来久方ぶりのユーゴスラヴィア映画で第二次大戦に活躍したユーゴ解放軍の戦闘を描く。監督は「大きなものと小さなもの」でカルロビ・バリ国際映画祭賞を受けたウラジミール・ポガッチ、脚本はポガッチとミハエロ・レノセビッチが書き、撮影をアレクサンドル・セクロヴィッチ、音楽をボヤン・アダミッチが担当。出演は我が国に初めての顔ぶれで、ニコラ・シミッチ、ミラン・プジッチ、ラドミラ・ラドビアノビッチ・アンドリッチ、セヴリン・ビエリッチ、パヴレ・ヴイシッチら。黒白・トータロスコープ。
一九四三年、ユーゴスラビアの中心部を流れるスジェカ河の峡谷附近、パルチザンの一隊が四千人の負傷者を護送中、敵に包囲された。隊長ペタール(ミラン・プジッチ)は自分の無能から、味方を窮地に追いこみ戦友から責任を追及されていた。隊員たちは自分の運命に見放され、悲惨な最後を予測していた。が、敵の投降の呼びかけには結束して反対した。包囲陣からの射撃は正確だった。味方は必死になって逃げ道を探した。さながら生き地獄のような陣地内で、生き残りの一人の女性が出産した。上官に反抗的で勇敢なチャフカ(ニコラ・シミッチ)は脱出口を発見、敵の背後にまわったものの、彼は発見され脱出は不成功。隊に戻った彼は指揮官に自分の発見した道は敵のワナだといった。が、だれもきかない。指揮官は命令を下した。部隊は命令のままに行動を開始した。チャフカは自分の発見した道を再び進み、敵に逮捕された。味方を裏切るか死かのどちらかを選ばなければならない。敵は彼に弾を一発こめた銃をわたした。再度味方の陣地に戻ったチャフカはペタールの前に立った。上官を撃って敵側につくか……。峡谷突破の悲惨な戦いが終った。数人の生き残りと生れたての赤ん坊が自由の地へと向った。その時、ペタールを撃つ銃声が聞えてきた。そして再び、スジェカ峡谷は深い沈黙に戻った。
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