ドーン・アダムス
Marion
「大いなる神秘 情炎の砂漠」のフリッツ・ラング監督が過去の自分の作品を再映画化した怪奇映画。脚本は彼とH・オスカー・ウッティッヒの担当。撮影をカール・レーブが受けもっている。音楽はゲルハルト・ベッカー。出演するのは「狂った本能」のドーン・アダムス、「めざめ(1958)」のペーター・ファン・アイク、ゲルト・フレーベなど。
捜査一課殺人犯担当のクラス警部(ゲルト・フレーベ)に不思議な透視力をもつ盲目の老人から近くで殺人が行われようとしていると電話で警告してきた。事実、ホテル・ルクソーに泊ったバルター記者が車中で暗殺された。ちょうどそのころ、ルクソーの十五階からマリオン・メニル(ドーン・アダムス)という若い女が飛降り自殺しようとした。隣室のアメリカの実業家テイラー(ペーター・ファン・アイク)が助けたが、駆けつけた主治医ヨルダン(ヴォルフガンク・プライス)は彼女が強度の神経衰弱に陥っていると言った。そして彼女は不具のため病的な嫉妬を抱く夫の虐待を逃れてきたのだとテイラーに語った。テイラーは英国の原子力工場買収でロンドンに向う途中だったが、彼女に同情を感じた。翌日、マリオンの夫メニルがやって来てマリオンに乱暴を働いた。テイラーはメニルを射殺。マリオンの電話で駆けつけたヨルダンは心臓マヒとして死体を病院に運ぶ。救急車の中で死んだはずのメニルが起き上る。彼はテイラーの空弾に射たれただけだったのだが、同乗の男が今度は本当に射殺した。その夜、火をふいている古ビルを発見したパトロールカーは、そこにメニルの死体と、死んだ犯罪の天才マブゼ博士に関する調書を見出した。ルクソーにまつわる犯罪の手口はマブゼ博士のものと似ている。マブゼは生きている?警察は緊張した。一方、テイラーはマリオンとの結びつきに運命的なものを感じ、彼女と結婚、アメリカへ出発しようとする。彼はヨルダンに別れの電話をしようとした。突然マリオンが、私たちはカメラで監視されている、逃げないと殺されると叫んだ。二人は逃げるがホテルの探偵に捕まり地下室へ閉じこめられる。そこはテレビ室になっていて、ホテルの各部屋が映っている。そしてヨルダンとはマブゼの息子で、テイラーを殺し兵器産業の実権を握り原子爆弾を積んだロケットで世界動乱を計画していることが分った。しかしテイラーとマリオンが消えたことを不審に思ったクラス警部に二人は救われた。逃げるマブゼは鉄橋から落ちて河に沈んだ。
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