スヴェン・リンドベルイ
Nils
セルマ・ラーゲレーヴの『ニルスのふしぎな旅』をタージとキャスリーン・オウレルが共同で脚色、ケン・ファントが演出・製作した童話ドラマ。撮影はマックス・ウィレン、音楽はトルビョルン・ルンドクイストが担当した。出演は子役のスヴェン・リンドベルイ、「処女の家」のマックス・フォン・シドー、アニカ・トレトウほか。イーストマンカラー・アガスコープ。
ニルス(スヴェン・リンドベルイ)は悪戯者で怠け者である。ある日、彼は魔法にかかって小人にされ、急に動物たちの話し声が理解できるようになった。雁の群が飛んでいた。地上を歩いている鵞鳥に、一緒に飛ぼうと誘う。ニルスは鵞鳥のモルテンを止めようとしたが、モルテンはしがみつくニルスをぶら下げたまま、空高く舞い上った。鵞鳥とニルスは無二の親友になった。こうしてニルスの不思議な旅が始まった。だがそのうちにニルスはなんだか淋しくなり、普通の少年の姿になりたいと思うようになった。そして一羽の梟から、モルテンを連れ戻すことができたら、元通りになれる、と教えられた。一行の旅はつづき、次々と冒険がつづく。ニルスは白鳥の命を助けた。傷ついた仲間を介抱してやった。悪狐のスミールを捕えて犬小屋に縛りつけた。彼はストックホルムの上空で、意地悪の雁に落された。運よく助かったニルスは鷲を篭から助けてやり、彼の背中に乗って雁の群を追った。短い夏が終り、一行は南の方へ飛んだ。帰途につくニルスは悲しかった。例の条件がある。鵞鳥を両親の所に連れて帰らねばならない。そうしたらモルテンはあぶり肉にされてしまう。その時、他人に親切でさえあれば心配することはない、と言う女の声がどこからともなく聞えてきた。黄昏時、ニルスは故郷に着いた。だが、モルテンや鵞鳥を連れた雁が、ニルスの母親に捕まった。ニルスは血相を変えて叫んだ。「後生だから殺さないで!」母親は以前よりも大きくなっている息子を見、嬉し涙に暮れた。夜明けにニルスは岬にさ迷い出た。例の雁の一群が空を渡っている。ニルスは大声で呼んだ。だが雁たちはおびえるだけ。ただ、リーダーのアツカだけはやって来た。ニルスはアツカを抱きしめ、別れを告げた。雁の群れは遠い水平線に消え去って行った。
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