ダニエル・ジェラン
Leonard Maurizius
「アンリエットの巴里祭」のジュリアン・デュヴィヴィエがドイツ作家ヤコブ・ワッセルマンの小説から脚色・監督に当った一九五四年作品である。撮影は「青い麦」のロベール・ルフェーヴル、音楽は「たそがれの女心」のジョルジュ・ヴァン・パリスとピエエル・ラリウ。出演者は「愛情の瞬間」のダニエル・ジェラン・「真夜中まで」のマドレーヌ・ロバンソン、「人間魚雷」のエレオノーラ・ロッシ・ドラゴ、「恐怖の報酬」のシャルル・ヴァネル、「輪舞(1950)」のアントン・ウォルブルック、「洪水の前」のジャック・シャバッソール、ドニ・ディネス、ベルト・ボオヴィなど。
スウィスのベルヌに住む検事ヴォルフ・アンデルガスト(シャルル・ヴァネル)の一人息子エツェル(ジャック・シャバッソール)は、モオリツィウスという老人が父を訪問したことから、エツェルがまだ生れない十八年前、老人の息子レオナアルが妻殺しの嫌疑をうけ、当時の少壮検事アンデルガストの論告によって確証のないままに終身刑の判決をうけ、現在服役中であることを知った。探求心にもえるエツェル少年はモオリツィウス老人が再審上告書を父のところへ持って来たのを知って老人を訪れた。老人は、二十三歳の若さで大学教授となったレオナアル(ダニエル・ジェラン)が、父に無断で十五歳も年上の裕福な未亡人エリザベート(マドレーヌ・ロバンソン)と結婚したのち、エリザベートの妹アンナ(エレオノーラ・ロッシ・ドラゴ)と恋仲になり、この三角関係が危機に逢着したころ、エリザベートが何者かに射殺され、その場に来合せた当時一流の美術評論家グレゴワアル・ワレム(アントン・ウォルブルック)の証言とアンデルガスト検事補の論告によって終身刑を言い渡されたことを語ってくれた。老人からワレムらしい人物がリュセルヌにいると聞いた少年は、家を飛出してリュセルヌヘ行った。息子の行動に動揺した父検事は法務庁から当時の調書を取り寄せて読み返して見た。レオナアルの陳述には、結婚後一年して、絵の勉強をやめてパリから帰って来たアンナと知り合い、レオナアルがエリザベートとの結婚前に儲けた秘密の子供の処置を彼女に相談したことから親密となり、二人の関係を知ったエリザベートが半気違いとなったのを、ワレムが仲に入ってやや落着いたところに事件がおきたことが記録されていた。アンナの証言もワレムの証言を支持していた。レオナアルが犯人でなければワレムが臭いとアンデルガストは考えた。一方、エツェル少年はとある下宿でうらぶれたワレムに会い、彼の渡したピストルでアンナが姉を殺した事実を聞き出した。ワレムは偽証で彼女をかばい、代償として彼女の愛を得たのだった。エツェルが真実を知ってベルヌへ帰ったとき、レオナアルはすでに父検事の手で特赦をうけていた。自由の身となった彼は早速アンナに逢った。彼は未だに真の犯人を知らなかったのだ。変りはてたアンナの口から事実を知らされ彼はもう彼女と逢うまいと決心した。残る彼の希望である秘密の子供についてアンナは、子供の方からレオナアルとは会いたくないと言ったことをつげた。自由を得ながら全てを失ったレオナアルに残されたのは皮肉にも“死”だけだった。
Leonard Maurizius
Elizabeth
Anna
Andergast
Waremme
Etzel
Leonard's Father
Etzel's Grandmother
Landlord
Melitta
Examining Magistrate
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