ティタ・メレロ
Rosa
シスト・ポンダル・リオスの原作を彼自身が脚色、エンリケ・カレラスが監督した実話の映画化である。この作品はアルゼンチンで一九六四年度最優秀映画賞を、またカレラスは最優秀監督賞を受賞した。撮影はアントニオ・メラヨ、音楽はティト・リベロが担当。出演はわが国には馴染がないが、ホルヘ・サルセド、ティタ・メレロ、ウォルター・ベダルテほか。製作はセレクシオネス・ウィンクル・S・R・L。
一九六二年十二月、アルゼンチンの首都ブエノスアイレス市の刑務所では、大規模な脱獄が計画されていた。この刑務所には、定員八百人のところへ、二千四百人もの囚人が入れられているという混雑ぶりで、所長や神父など刑務所の幹部が待遇改善を要求しても、法務省からは予算がおりなかった。その上裁判所がたるんでいるため、囚人のなかには四年間もこの未決監で待機させられているものがあり、不平が高まって脱獄を計画する者も多かった。殺人罪で五号室へ入れられたレンチョ(W・ビダルテ)は、独力で脱獄を計画したが、黙々と脱獄計画を練っているベラルデ(J・サルセド)に、軽挙妄動をいましめられた。ベラルデは面会日、妻のロサ(T・メレロ)に逃走資金五十万ペソの調達を命じた。ロサはベラルデの部下に頼んで、銀行帰りのナイトクラブ出納係を襲撃させ、必要な金を手に入れた。計画を実行する日が来た。差し入れの小包から取り出したピストルで、ベラルデと仲間たちは看守を脅迫し、人質にして鍵を奪ったが、最後のドアが開かない。ベラルデは計画が失敗したと悟ったが、理性を失った。囚人たちはかねて反感を抱いていた看守を殺し、更に所長に釈放を要求、もし駄目なら人質を皆殺しにすると意気まいた。所長は囚人に生命の保証を約し、彼らに武器を捨てさせた。だが看守長は看守になったばかりの息子の無残な死体を見て逆上し、囚人たちに銃弾の雨を降らせた。その弾丸をのがれたベラルデは、妻のロサが見送る中を、護送車で他の刑務所へ連行されて行った。
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