パヴレ・ヴイシッチ
Bsko
ファディル・ハジックとメシャ・セリモビッチが共同で脚本を書き、ハジックが監督した戦争映画。撮影はジョルジュ・ヨーリッチ、音楽は「夕焼けの戦場」のウラジミール・クラウス・ライテリッチが担当した。出演は我が国にはなじみがうすい俳優ばかりで、パヴレ・ヴイシッチ、フセイン・ソーキッチ、ドーシャン・ブライッチほか。
一九四二年、ナチに占領されたユーゴスラヴィアには幾つもの抵抗グループが組織され、とぼしい武器で重装備のドイツ軍に挑んでいた。銃を持たない若い炭抗夫たちもまた炭坑のダイナマイトを運び出し、オズレン山に集結した。そして敵の装甲列車襲撃を計画したが、その付近にドイツ兵が駐屯していることを知ると、まずその方に攻撃をかけることにした、血気盛んな若者たちの奇襲と、中隊長の機転で一気にドイツ軍を粉砕してしまった。だがその時、中隊長は敵弾に命をおとした。翌朝彼らは計画通り装甲列車を襲撃、成功した。この時彼らは乗客の中の可憐な少女に心をひかれるのだった。澄んだ美しい瞳の少女に、彼らは母や恋人、そして妹への思いをはせた。少女はそれから彼らと行動を共にするようになった。それ以後抵抗運動は幾度か勝利をおさめたが、ドイツ軍の兵力は衰えるどころかますます増強されていった。虐待もつのるばかりであった。そしてついに雨風の吹きすさぶコンコ山の頂上で、彼らは敵の圧倒的な攻撃にあい、またあまりの空腹と疲労でつぎつぎに傷つき倒れていった。若い炭抗夫たちは戦争の無意味さや、犠牲の大きさをまざまざと知らされたのだった。彼らの埋葬には雨が降り続き、冷たい風が吹いていた。樹々の梢の間からは安らかに冥福を祈る歌声がつきることなく続いていた。
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