ロベール・デリー
Henri
脚本はロベール・デリーとピエール・チェルニア、潤色・台詞を前記二人にジャン・ロートとコレット・ブロッセが加わり、「ミス・アメリカ パリを駆ける」に次いで、これが二本目のロベール・デリーが監督したコメディー。撮影はジャン・トゥルニエ、音楽はジェラール・カルヴィが担当した。出演はデリーのほかに、実生活ではデリー夫人のコレット・ブロッセ、「でっかい札束」のディアナ・ドース、アンリ・ジュネス、ロバート・ロリスなど。
イギリスのトゥイッケンハムで行なわれる仏英対抗ラグビー試合の応援に行くのは、アンリ(R・デリー)にとっては年中行事であった。しかし、今年に限り大っぴらに行くわけにはいかなかった。というのは、試合の翌日が彼の結婚式だったからである。婚約者は悪女というのではないが、アンリにとっては、いいわけをしてせっかくのラグビー試合に行くなどというのは面白くない。そこで一計を案じ、ボルドーにいる伯母を病人にしたてあげ、見舞いと称してボルドーならぬトゥイッケンハムに行った。その地でいちばん用心しなければならないのは、未来の義姉ブリスバーン夫人(C・ブロッセ)に出会うことであるが、なんと競技場でばったりと出会ってしまった。熱狂する観客の間をぬって逃げ回っているうちに、観客の肘鉄をくって前歯を二本折ってしまった。早速歯医者をさがし、待合室に腰を落ちつけたまではよかったが、そこに目下治療中の警官の着ていた上着と帽子がおいてあった。いたずら心から、それを身につけたアンリは、次の瞬間から、すぐ警官と間違われてしまい、街中へ出るはめになった。英語がしゃべれないのに歯が二本折れてしまっているので、口を開くことが出来ない。街ではいろんな事件に出くわしたが、素人警官の悲しさ、失敗の連続。やっとのことで彼は、なんとか歯医者へもどることができたが、街では本物の警官が、アンリの失敗の後始末をせねばならず、てんやわんや。しかしアンリは歯もなおり、ほうほうのていで、婚約者の待つフランスへ帰りついたのである。
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