デイミトル・ブイノゾフ
Dimo
反戦運動を描いたブルガリアの作品で、女流監督のビンカ・ジエリヤスコワのデビュー作である。出演者は、デイミトル・ブイノゾフ、ルミヤナ・カラベロワ、リュドミラ・チエシメジエワ、ゲオルギー・ゲオルギーエフ、ゲオルギー・ナウモフ、エミリヤ・ナデワ等。脚本はフリスト・ガネフ、撮影はワシル・ホリオルチエフ、音楽はシメオン・ピロンコフが担当。
一九四三年、ナチ占領下のブルガリアの首都ソフィア。デイモ(D・ブイノゾフ)とヴェスカ(L・カラベロワ)は、地下組織の街頭連絡で初めて顔を会わせた。デイモの家には、青年軍事組織指導部のムラデン(G・ゲオルギーエフ)が潜んでいた。また、近所に住む小児麻痺で車椅子に乗ったきりの少女ツヴエタ(L・チエシメジエワ)を、デイモは実の妹のようにかわいがっていた。ヴェスカは製本所で働く少女だった。デイモが躊躇したため反ファシストのビラ撒きに失敗した夜、デイモとヴェスカの心に緩いものが流れあった。懐中電灯を明滅させながら夜の街を歩くヴェスカを、デイモは“ほたる”と呼んだ。「ほたるの命は短いものよ」とヴェスカは答えるのだった。次に下された任務は、毛皮倉庫焼打ちであった。だが、ムラデンの妻ナージャ(E・ナデワ)をつけ廻していたスパイのスラフチョ(G・ナウモフ)の密告で、ムラデンはあやうく捕えられそうになった。その事でデイモにスパイ容疑がかかり、彼は任務からはずされた。彼を信じていたのはヴェスカだけであった。焼打ちには成功したが、スラフチョの手引きでデイモは捕まってしまった。ヴェスカに、その急を告げに車椅子を走らせたツヴエタは、坂下の街路樹に衝突して死んでしまった。ヴェスカも捕えられ、二人は拷問にかけられた。しかし、秘密を守り通し、そのままヴェスカは自殺してしまった。二人のいなくなった後、ミーシャとスヴェトラが新しく任務についた。彼等の若き日々を犠牲にして、勝利の日まで抵抗を続けるために。
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