ヴァレンティナ・フラスカロリ
Benita
最近では「呪の文身」等に出演し本邦ではなかなかお馴染の少なからぬヴァレンティナ・フラスカロリ嬢の主演になる一篇の人情劇で、相手は腕の確かなアルフレッド・ニポチ氏である。(無声、全四篇)
アルゼンチンの田舎娘が旅興行の若い歌劇俳優と駆落してイタリアに渡ったが、漸次生計に困って来た。間もなく男はある老作曲家に見出されある一歌劇団の花形となった。この頃から彼女を離れ浮気者の某伯爵未亡人等にその心を惹かれていった為、娘はやむなく老作曲家の許に寄宿した。その後ある新作物公演の際、大道具の過失から彼は重傷失明の厄に遭った。未亡人の心は忽ち彼を離れ他の男を引き入れ、二人共謀して彼の財産をさえ持ち逃げすべくと企んだ。この時可憐なる娘は彼の許に看護婦として棲み込み、心奥からの看護を尽した為視力は漸次回復され、悪人二人の陰謀を看破してこれを懲らした。かくて娘の誠心に動かされた彼は過去の濁りを離れ、娘が愛の故郷へ、二人相携えて帰ったのである。
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