ピナ・メニケリ
Marguerite Laroque
菊地幽芳氏が『白蓮紅蓮』として其の面影をそのまま伝えた原作である。自我の強い誇りの高い女と温順な若紳士との皮肉な恋の語り。ピナ・メニケリ、「或る女の手記」のルイジ・セルヴェンティ氏が出演している。無声。
裕福な暮らしをしていた老ラロークの孫娘マルゲリートは美しい女の盛りであった。此の家に一人の若い男が秘書役として入って来た。マキシム・オディオットと云う若者である。此の男がこの物静かな田舎の旧家に来たには理由がある。それは女学校に居る妹の嫁入りの持参金を得る為なのであった。この家に居た女家庭教師は新米のマキシムに心を傾けかけた。令嬢のマルゲリートには世間知らずの娘の強情さがあって男らしいマキシムと時々意見の衝突があった。マキシムは仲々譲らないので令嬢は憎さ百倍した。女家庭教師も或る反感からマキシムを陥し入れんと計った。かくして老ラローク氏が死後俄然局面は一変する。即ち若き男マキシムは実はシャムプシー侯爵の忘れ遺子で老ラロークは侯爵の財産を横領し現在の富を得たのである。之れを知ったマキシムは令嬢に苦しさを知らせぬ為口を閉ざして家を去る。後にマキシムの真に男らしき態度を知ったマルゲリートは婚約者を捨て己のあまりにわがままなりし事を悟りマキシムの後を追って都に上る。マキシムの頭上には今や愛と富と幸福とがもたらされたのである。
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