ラリー・シーモン
Spuds
欧洲大戦の未だたけなわの頃フランス戦線の塹壕に芋むき大将と綽名されている兵士があった。彼といえども陣頭に立って雄々しく戦い天晴れ功名手柄を立てようと決心していたが、不幸にも彼の役目は馬鈴薯の皮をむくことで如何とも仕方がなかった。殊に彼の属する隊の大尉が彼を目の敵にして叱り飛ばしてコキ使うので、芋むき大将は大不平だった。ある時敵陣から飛来した手榴弾と珍戦妙闘を演じて見方の危難を防いだが、執拗な大尉の虐待は相変わらず止まらなかった。ところが、米軍の軍用タンクが一台独軍に奪われたので、芋むき大将は取返して功名を挙げんと単身敵地に乗り込んで首尾よくタンクを奪還したのはよかったが、芋むきの身の悲しさタンク操縦法を知らないので、無闇やたらにタンクは躍進し縦横無尽に独軍の戦地を荒らし廻ってヒョンな手柄を顕した。
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