エレーヌ・ダルリー
Marie Didier
『ルイ・フィリップ王治世時代に於けるパリ生活の断片』と断り書きがしてある。フェリックス・ピア氏の原作からセルジュ・ナジュディン氏が脚色監督したもので、主役は「キイン」や「恋の凱歌」で巧みな演技を見せるニコラ・コリーヌ氏とエレーヌ・ダルリー嬢である。「テオドラ」にリタ・ジョリヴェ嬢と共演したルネ・モープレ氏や若く美しいフランシーヌ・ミュゼ嬢も出演している。パリ気分の汲めども尽きぬ情趣深き作品である。無声。
ある陰気な夜。屑屋のジャンはセエヌ河の河岸で会計係のジャック・ディディエという男が殺されるのを見た。虫の息のディディエから彼の娘マリイの後事を托された。二十年経過した。マリイ・ディディエは腕の良い縫女となった。彼女の友達に誘われて、クレエル・ホフマンからたのまれた仕立物の衣裳を着て、ある舞踏会に出た。フランレエルという男から無理強いに接吻されそうになった所を、騎士のアンリ・ベルヴィルに救われた。仕立物の晴れ着は目茶苦茶にされた。彼女は死のうと決心した。そして彼女が自分の部屋に入った時、彼女はそこに可愛らしい赤ん坊を見出した。可愛そうに思って彼女はその赤ん坊を養ってやろうと思った。しかしこの喜びも長くは続かなかった。赤ん坊はさらわれた。やがて警察官が彼女を逮捕に来た。罪名は子供殺しであった。マリイはサン・ラザアルの牢獄に送られた。この事件はホフマン男爵の手によって企てられたのである。彼は彼の娘クレエルとフランレエルの間の罪の子をかくすために産婆のポタアルの力をかりてこうした事件を作ったのだった。又前に料理店でアンリ・ベルヴィルとフランレエルの間に喧嘩を起こさせフランレエルを亡きものにしたのも彼のなす業であった。これは自分の娘と自分が後見をしているベルヴィルとを一緒にするためなのである。彼はベルヴィルの財産を使い込んでしまっていたのだ。ジャン老爺はホフマン男爵の所に出かけて行った。彼はそこでディディエ殺しの犯人が同じく男爵だったことを知った。男爵はジャンを警察に渡そうとしたがそれはあべこべの結果になった。アンリとマリイとは結婚するであろう。
Marie Didier
Le pere Jean
Henri Berville
Baron Hoffmann
Claire Hoffmann
La Potard
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