V・ブジンスカヤ
Katka
昨年度に発表された新しいソフキノ映画で、M・ボリソグレブスキー氏が書卸した台本によってフリードヒッヒ・エルムラー氏が監督したものである。ブジンスカヤ嬢、ニキチン氏、ソロヴゾフ氏及びチェルノヴァ嬢が主要なる役を演じている。(無声)
美しい田舎娘カトカは都に憧れて唯だ一人レニングラードへ出て来た。しかし都会の生活は彼女が空想していたように華やかなものではなく、日々のパンを獲るためには林檎売りをしなければならなかった。彼女の美貌に目をつけた不良青年のセムカは甘言を以て彼女を誘惑した。そしてカトカが身重になった時冷酷なセムカは彼女を棄て去って、表面は林檎売りをしている倫落の女ヴェルカの許に走った。生れ落ちようとする愛し子のためにカトカは尚も苦しい行商人の生活を続けた。そして健気な彼女はヴァドカと呼ぶ教養ある善良な男で意志薄弱のため乞食同様の境涯に落ちている浮浪者を気の毒がって、自分の下宿の片隅に寝さしてやることにした。カトカが月満ちて女児を分娩してからヴァドカは誠心こめて母子を介抱した。彼はこの母子を肉親のように愛した。ヴェルカの持っている宝石を手に入れようと企てたセムカは仲間の悪徒等をして夜半に自分達の部屋へ押入らせた。しかし彼は予めその宝石を隠しておいて自分の懐のみを肥した。そしてその夜下宿の主人は殺された。セムカはかくてヴェルカをも仲間にして悪事を強いた。その後ヴェルカの知人なる富裕な家畜商人を殺害せんとして果さず、出合頭に警官に逢ったので、カトカの部屋に入り女装してカトカに化けて逃れんとした。愛するカトカとその子に危険が迫ったのを見たヴァドカは臆病心を征服してセムカと格闘し、遂に彼を警官に引渡した。かくてカトカとヴァドカとは新しい生活に入った。
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