監督、脚色
「兵器庫」「スヴェニゴラー」の製作として知られているアレクサンドル・ドヴジェンコが自ら脚色し、監督に当った映画で、撮影はダニー・デムツキーが受持ち、L・ボディック、U・ソルンツェワ両人がアシスタントとしてドブジェンコを助けている。農場の協同化の勝利を主題としたウクライナ・キエフ撮影所作品である。無声。
ストーリー
ソビエト・ウクライナの農村。実った穀物が風に波を見せて動き、向日葵の大輪が咲いている。林檎は水々しい淡紅色の顔を枝の繁みから窺わせ農場は見渡すかぎりの豊作である。一人の老人がこの農場の片隅、果樹の樹陰に横っていた。彼は七十五年の鍬と鋤の生活から今や永遠の眠りに就こうとしているのだ。老人は林檎を噛った。だがその老顔に微笑が浮んだと思った瞬間彼の体は忽ちがくりと崩れた。死!併し彼のあとには息子夫婦がいる。それに孫の若者ヴァージルがいる。ヴァージルはソビエトの国策たる農場協同化の先頭に立って、働く若者だ。農場にはトラクターが是非とも必要だ。そこでヴァージル達はトラクターを村に使用することにきめる。今日はそれが村に着く日である。が、その機械の来るのを喜ばない奴が村にもいた。富農(クラーク)だ。彼等は共同耕作を拒んで飽くまでも個人的利益を主張した。このソビエトの害虫の行為に憤激した一人の農民は富農の馬をやっつけようとまでする。俄かに村に人が集まった。そして何かを見張る。遠い地平線、曲折しこ道の彼方にトラクターが現われたのだ。群衆は一斉にそこへ突っ走ると機械はどういうわけか突然止まった。クラークの顔に冷笑が浮かぶ。農民は必死となって機械を押そうとする。原因が知れた。水がないからだ。そこで隣村から水が持って来られる。再びトラクターの行進。村に歓声があがる。トラクターが村の仕事を昂め出した。ヴァージル等の努力が酬いられた。だが或る夜ヴァージルは恋人の許をたずねて間もなく何者かに殺される。彼の家の戸口に村の僧侶が訪れるが、若きコムミュニスト、村のソビエトの指導者の体が彼等の手に委せられるが。ヴァージルの父は息子の葬いをソビエトの委員等に頼んだ。農民達は胸に若い指導者のための復讐を誓うため集まった。棺は彼等の歌声につつまれながら墓地に運ばれていく。この時、野原を走って来る者がある。富農だ。働く農民はみな葬列に参加してしまったのだ。富農に今更何の用がある。遂いに富農は屈した。わしが殺したのだと喘ぐように叫んで彼は農民達の前に告白し哀訴する。だが農民は新しい生活に関する指導者の言葉に傾聴している。やがて雨が降ってきた。そしてそれは一滴ごとに果実や樹々や穀物を銀鼠色に濡らして行く。それはとりも直さず前進するソビエト農村の姿なのだ。
コラム・インタビュー・イベント
ニュース
作品データ
- 原題
- Soil Zemlya
- 製作年
- 1930年
- 製作国
- ソ連
- 配給
- 千代田洋行
- 初公開日
- 1930年
- 製作会社
- ヴフクウ
[c]キネマ旬報社