ジミー
Jimmy
ゴーモン・フランコ・フィルム・オーベール社が製作した小品発声映画で、ジャン・ブノア・レヴィとマリー・エプスタンが共同で原作脚色監督したもの。主役は当年十三歳のジミー少年が勤め、「シラノ・ドウ・ベルジュラック」に出演したアレックス・ベルナールが助演している。
ジムミイ少年はパリ育ちの生粋のパリジャンだったが、両親には幼いときに死別れ祖父の手一つで育てられた。祖父はラピストル爺さんと呼ばれ、嘗はカジノ・ド・パリの擬音師として知られていたが寄る年波には勝てず、今では片田舎のモアジの町の唯一のレヴュー劇場モアジ・フォーリーの擬音係雇われて細々と生計を立てていた。ところが耳が悪くなっていた祖父は或る日開演中耳が聞こえなくなって、舞台をすっかり台なしにしたので解雇されて了った。ジムミイは健気にも劇場に出掛けてやっとの事で祖父の後継者として勤めることとなった。ジムミイの擬音係は始めてのこととて巧く行かなかったが、そのチグハグナな擬音が却って観客を喜ばせた。フランス一の人気者モーリス・シュヴァリエが其日から此のモアジ・フォーリィに出演することになっていたが、それは劇場主が悪周旋師に欺されていたのであってシュバリエはアメリカの映画会社と契約して渡米する筈であった。観客はシュバリエを出せと怒って足を踏み鳴らした。嘗てパリでシュヴァリエの舞台を見ていたジムミイは代役を演ずることとなった。観客は始め散々に罵倒したが、シュヴァリエそっくりの身振手振りで「ヴァランチイヌ」を唄い出すと観客はやんやと拍手した。劇場主は大悦びでジムニイに莫大な手当てを与えた。ジムミイは大早速精巧な聴音器を買って祖父を悦ばせた。
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