カルロ・デッレ・ピアーネ
Balla
死の床に就いた老女の脳裏に束の間蘇る若き日の旅の思い出を回想形式で描くドラマ。監督はジャズ・ミュージシャン出身という異色の経歴を持つ、「いつか見た風景」のプピ・アヴァティ、脚本・原案はアヴァティと製作も兼ねる実弟のアントニオ・アヴァティ、撮影はパスクァーレ・ラキーニ、音楽はリズ・オルトラーニが担当。出演はカルロ・デッレ・ピアーネ、テッツィアーナ・ピーニほか。
不意の発作で倒れた老女ラウラは、自分が一番美しかった頃の記憶を思い起こす。一九一一年、ボローニャの高校生だった彼女(リディア・ブロッコリーノ)は、中年独身の文学教師ラウラ(リディア・ブロッコリーノ)と若く美しい美術教師のセレナ(ティツィアーナ・ピーニ)に引率されて、クラスのみんなとフィレンツェへ3日間の徒歩旅行に出かけることになった。一行の中にはラウラが秘かに思いを寄せるアンジェロ(マルチェッロ・チェゼーナ)の姿も……。彼らの旅の途上には、男子生徒と兵士の軽いいさかいや、結婚を目前にして死んだ男女の葬列に出会うなど、小さな出来事が起こっては消えてゆく。最初に泊まった古いホテルで、バラ先生はかねてより思いを寄せるセレナが夫の浮気に悩み、誰とでも寝てやるわというのを聞いて期待に胸をふくらませるが、内気な彼にはきっかけをつかむことができなかった。一方、ラウラら女生徒は男子生徒達が皆夜の街へ繰り出したことを知って幻滅を覚えるが、それでもアンジェロへの思い断ち難いラウラは翌日、形だけでも恋人としていっしょにいてほしい、とせつない胸の内を打ち明ける。そして旅の最後の夜、セレナといい雰囲気になりかけたバラはしかし、彼女がハンサムな男子生徒ジュゼッペと朝を迎えたことを知る。バラは口をつぐんでいたものの、一行が旅から戻るとセレナとジュゼッペの噂は校長の耳にまで届いていた。停職を命じられ学校から去ってゆくセレナを生徒達は拍手で送り出した……。そのクラスメートたちも今はすべてこの世を去った。そしてラウラもまた彼女を待つ彼らのもとへと最後の旅に出かけてゆく。
Balla
Serena Stanzani
Laura
Angelo
Giuseppe
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