レオニード・フィラトフ
Varakin
モスクワから田舎町へやってきた教師がそこで巻き込まれる奇妙な出来事の数々をシュールなタッチで描く、「ジャズメン」のカレン・シャフナザーロフの監督作品。脚本はシャフナザーロフとアレクサンドル・ボロジャンスキーの共同、撮影はニコライ・ネモリャーエフ、音楽をエドゥアルド・アルテミエフが担当。出演はレオニード・フィラトフ、オレーグ・バシラシヴィリほか。
モスクワの技師ヴァラーキン(レオニード・フィラトフ)が派遣された小さな町で目にするのは奇怪な出来事ばかりだった。レストランに入ってみれば彼の生首を型取ったケーキが出され、おまけにコックが目の前で自殺してしまう。あげくの果てにはヴァラーキンはそのコック殺しの犯人として警察に捕まってしまい、この町を出られなくなってしまう。取り調べの後さまよい込んだ博物館で彼はこの町の不思議な成り立ちを知る--自殺したコックは1957年にこの町で初めてロックを踊ったかどで組織を追放された人物だという。一夜の宿を取った家で、幼い男の子から、「あなたはこの町から逃れられない、そのまま2015年に死ぬことになっている」という予言を聞かされたヴァラーキンは再び警察に呼ばれて、死んだコックの残した写真を見せられる。それはヴァラーキンの顔写真で、裏には「親愛なる父へ」というサインが。深まりゆく不条理な迷宮から抜け出せなくなっている彼のまわりにさまざまな人々が集まってくる。彼らの誰もが彼を死んだコックの息子だと信じて疑わないようだった。一同と共にヴァラーキンはカシの木の下に向かうが、その木は腐っていて倒れてくる。「逃げろ!」という声に促されるように町を出たヴァラーキンは湖にボートで漕ぎ出してゆく。果たしてこの混乱した世界は現在のソヴィエトの象徴であるのか、そして彼はそこから抜け出せるのであろうか?
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