サンドリーヌ・ボネール
モナ
南仏の路傍にさすらいの末に倒れて死んだ18歳の少女の孤独な道行が目撃者の証言を通じて描かれる「アニエス・Vによるジェーン・b」のアニエス・ヴァルダの監督・脚本作。撮影に「女の復讐」のパトリック・ブロシェ、音楽はジョアンナ・ブルドヴィッチがあたった。出演はサンドリーヌ・ボネール、マーシャ・メリルほか。
冬枯れの南仏の野原。行き倒れの一人の少女。その身許を語るものは何もなかった。ただ彼女がその孤独な旅の途中で出会った人々の記憶の中を除いては……。彼女の名はモナ(サンドリーヌ・ボネール)、18歳。寝袋とテントを担いでヒッチハイクをしながらのあてどのない旅。時折、知り合った若者と宿を共にしたり、農場にしばらく棲みついたりすることはあったものの、所詮行きずりの人々にモナがその内面を垣間見せることは滅多になく、またいずこともなく消えてゆくのが習いだった。ある時、プラタナスの病気を研究している女性教授ランディエ(マーシャ・メリル)がモナのことを拾う。ぽつりぽつりと自らのことを語るモナ。ランディエも彼女に憐れみを覚えるが、結局どうすることもできず、食料を与えて置き去りにする。モナは森の中で浮浪者に犯された。またしても放浪の旅を続けるモナはついにはテムの街で浮浪者のロベールたちと知り合い、すっかりすさんだ様子になってしまった。そしてそこへ、前にモナと空き家の別荘で暮らしていたユダヤ人青年ダヴィッド(パトリック・レプシンスキ)がやってきて、マリファナの取引きのことでロベールといさかいになってモナの住んでいたアジトは火に包まれてしまう。すっかり薄汚れて再び路上に戻ったモナはパンを求めて近くの村に赴くが、今しもそこはブドウ酒の澱かけ祭のさなか。何も知らないモナは彼女に澱をかけようとする屈強の男たちに追われ、恐怖に顔をひきつらせ、そのまま力尽きて路傍に倒れ込む。
[c]1985 Ciné-Tamaris / films A2
[c]キネマ旬報社