イ・パンヨン
ヘゴク
山奥のさびれた禅寺を舞台に、みなしごの少年、出家したばかりの青年僧、寺の主である老禅師の三人の男の、生と死のイメージを描く瞑想ドラマ。89年ロカルノ映画祭で金豹賞(グランプリ)のほか五つの賞を受賞している。
清澄な自然に包まれた山奥の小さな禅寺にひきとられたみなしごのヘジン(ファン・ヘジン)は、ある日、つがいの鳥の片方を殺してしまう。残された鳥はヘジンにつきまとい、そのため彼は崖から滑り落ちたり、道に迷ったりとひどい目に遭う。青年僧キボシ(シン・ウォンソプ)は盲目で動けない母親を捨ててきたことへの苦悩から荒行に励むが、激流に流され傷つく。キボシを助けようとした老僧ヘゴク(イ・パンヨン)も床に伏し、ついに息を引き取ってしまう。キボシは遺言どおり、ヘゴクの亡骸を山で燃やし、その灰を自然の中に撒き散らす。キボシは山を降りる途中救いを見つけ、残されたヘジンも鳥が飛び去るのを見つめていた。
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