ヴェロニカ・フォルケ
Kika
フィルムノワール、喜劇、サイコドラマをそれぞれ体現している登場人物たちの間をひとり、純真無垢な女性キカが彷徨する、スペインを代表する映画作家ペドロ・アルモドバルの監督・脚本作品。アルモドバルは小説、雑誌、新聞の執筆などの活動を行いながら、「神経衰弱ぎりぎりの女たち」「アタメ」「ハイヒール」と映画を発表し続けている。アンドレアを演じるビクトリア・アブリルの衣装はフランスの有名デザイナー、ジャン・ポール・ゴルチエが担当しており、その奇抜ながら想像力あふれるデザインで作品を色づけている。エグゼクティヴ・プロデューサーにアグスティン・アルモドバル。撮影は、アルフレド・マヨ、音楽はペレス・プラードの既成曲を使用。出演は、キカにTV、演劇でも活躍しているヴェロニカ・フォルケ、その他「E.T.」「白と黒のナイフ」「赤い航路」などのピーター・コヨーテ、「溝の中の月」「マックス・モン・アムール」と国際的に活躍し、現在では「アタメ」「ハイヒール」とアルモドバル作品には欠かせない女優ビクトリア・アブリル、同じくアルモドバル作品の顔、ロッシ・デ・パルマほか。
メイクアップ・アーティストのキカ(ヴェロニカ・フォルケ)は仕事を通してアメリカ人の作家ニコラス(ピーター・コヨーテ)に出会い、関係を持ち始める。彼の妻は数年前に自殺し、彼は彼女の残した大きな家で義理の息子ラモン(アレックス・カサノヴァス)と暮らしていた。キカは、その後年下でハンサムな人気カメラマンであるラモンと同棲し始めるが、南米の放浪の旅から再びスペインに戻ってきたニコラスとも秘かに密会を行っていた。ある晩、メイドのフアナ(ロッシ・デ・パルマ)は、スキャンダルをスクープする話題のTV番組『今日の最悪事件』を見ていた。女性レポーターのアンドレア(ビクトリア・アブリル)は常に奇抜な服装で頭にカメラを設置して町中を駆け回る。彼女はラモンが母の自殺を苦にしていた時の元精神分析医兼恋人で、彼に振られたことを未だに憎んでいた。そんなある日、そのTV番組でも話題にしていたポルノ男優で強姦魔のポール(サンティアゴ・ラフスティシア)が姉であるフアナに会いに来て、キカをレイプしてしまう。アンドレアは、それをスクープし、倒錯的な性嗜好のラモンまで遠くからその現場を見ていたことを知ったキカは、悲しみに暮れ彼の元を去る。その事件をきっかけに殺人者としてのニコラスの姿が浮き彫りにされていく。アンドレアは必死で真実を言わせようとニコラスと血みどろの戦いになり、結局2人とも息絶えてしまう。キカはしかしそうしたドラマに動揺はみせながらも、ラモンからも遠ざかり、新しい人生に向けて歩んでいく。
Kika
Nicholas
Andrea
Ramon
Junan
Paul
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