第2次大戦中の中国大陸で、細菌兵器開発の名目で現地の捕虜たちを“マルタ”と称して、非道な人体実験を行った、悪名高き関東軍石井七三一部隊の実態を暴く実録映画。日本では「第2回フリクショナル・ムービー・フェスティバル」(91)において『黒い太陽七三一 戦慄!石井細菌部隊』の題で上映され、93年にビデオ発売されていたが、戦後50年の今年、初公開の運びとなった。特殊メイクを使ったグロテスクなシーンが多いが、見せ物的演出とは異なり、事実の持つ重みが衝撃を与える。監督・共同脚本は中国に生まれ、台湾、アメリカ、南米、ヨーロッパを転々とし、80年代以降は香港を拠点に活動する牟敦 。日本人役は全て中国人俳優が演じているが、日本語の台詞は日本人の声優が吹き替えている(日本語吹き替え版のみの上映)。
ストーリー
冒頭、“友好は友好、歴史は歴史”と字幕が出る。大東亜共栄圏の名の下に、日本が中国北東部を支配し傀儡国家の満州国を設立していた45年。戦局の悪化から、細菌兵器の開発を急ぐため、一時左遷されていた医学博士の石井四郎中将がハルピンの七三一部隊に配属された。同時に、多数の少年兵も内地から送られていた。七三一部隊は表向きは防疫給水部として飲料水の濾過消毒、伝染病などを研究する部門であったが、その実体はペストやコレラ、梅毒などの細菌培養や毒ガス兵器開発の研究のため、中国人やロシア人、満州人の捕虜たちを使って人体実験を行う悪魔の研究機関であった。実験に従事することになった少年兵たちは同じ人間がマルタ(丸太)と呼ばれて使い捨てられていく光景に、次第に無関心になっていく。日本の敗戦が確実となった8月、石井中将は戦争犯罪者としての追求を逃れるため、全部隊員に研究所の破壊と証拠湮滅を命じた。そして研究資料を乗せた引き揚げ列車の前で、石井は七三一部隊の一切に対する箝口令を敷く。