風祭ゆき
藤森須磨子
多額の借金を抱える若い工場経営者が妻と愛人三人で保険金替玉殺人事件を起こすまでを描く。九州で実際に起こった事件を取材した読売新聞社篇『保険金替玉殺人事件』をもとにしたもので、脚本は「連続暴行 白昼の淫夢」の三井優、監督は「十階のモスキート」の崔洋一、撮影は「ピンクのカーテン3」の野田悌男がそれぞれ担当。
藤森は若いながらも、兄の勝二、弟の文彦や数人の従業員を使って藤森工業という解体屋の二代目社長を務めている。陽気で精力的に働く藤森は、事務員の中村豊子を愛人にしており、そのことは妻の須磨子も知っていた。ある日、二人の従業員が作業中の事故で死に、その補償金問題などで工場は経営危機を迎える。藤森は須磨子にまかせているスナックで兄弟をなじり、荒れ狂った。やがて、借金のかたに、債権者の八重垣は工場のトラックや機械を持ち運んでしまう。社員の給料も払えない藤森は豊子にも金を借りるが、彼女はその見返りに、藤森の家に同居させて欲しいと申し出る。藤森を間に、妻妾同居の奇妙な共同生活が始まる。須磨子は豊子と一緒に住むことに不満であるが、金を借りていることから、しぶしぶ承知していた。八重垣の催促は激しさを増し、耐えきれず、三人は夜逃げをする。ラブホテルを泊り歩く三人は川の字になって眠り、三人で肉欲を貧った。そして、逃亡生活に疲れた三人は、深夜、自宅に戻り、数日振りの風呂に入る。この頃から、逃亡生活を共にすごしたためか、須磨子と豊子の間に、不思議な親密感が生まれていた。しかし、その家には、三人の逃亡以来、弟の勝二とスナックのホステス清子がこっそり住んでおり、三人の行方を知らせるように頼まれていた八重垣に、彼らの帰宅を報せるのだった。翌日、部下を連れてやってきた八重垣は藤森に詰め寄る。藤森は工場の権利の他に、さらに五百万円借りていた。その時、豊子は紙袋から無造作に五百万円を放り出した。数日後、買手に工場を見せに連れていくと、そこで藤森の葬式が行なわれていた。怒って帰る客に、途方にくれる八重垣。その頃、あるマンションの一室では、藤森は自分の死を報じるテレビのニュースを見ていた。多額の保険金に、警察は須磨子と豊子を呼び出し、再三にわたって事情聴取をする。警察は保険金目当てに二人が藤森を殺したと疑っている。ところが、豊子と藤森の関係を問いつめられた須磨子は、女の嫉妬から、夫が生きていることを告白してしまう。その後、藤森が窓から飛び降り自殺をしたという記事が新聞に出ていた。
監督
脚本
撮影
美術
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企画
プロデューサー
歌
選曲
スチール
[c]キネマ旬報社